I-P-56
エポプロステノールとシルデナフィルの併用にて良好な管理が可能となった肺動脈性肺高血圧の 1 例
医療法人あかね会土谷総合病院小児科
下薗彩子,小松弘明,田原昌博,脇 千明

【はじめに】低年齢発症の肺動脈性肺高血圧(PAH)は予後不良であり,内科的治療に抵抗することも多い.われわれは 3 歳発症のPAHに対し,エポプロステノール(EPと略)とシルデナフィル(SLと略)の併用で良好な管理が可能となったので報告する.【症例】3 歳男児.3 歳 2 カ月時に全身浮腫および心雑音を主訴に紹介.受診時NIHA 3~4 で,CTR 75%,心エコーではRA,RVの拡大と著明な肺高血圧を認め,ANP 2,690pg/ml,BNP 5,710pg/dlと異常高値を示した.ベラプロスト,利尿剤投与を開始し,速やかに浮腫は軽減したが,その他の臨床症状,検査所見とも著変なく,発症より 1 カ月でSLの投与を開始した.これによりNYHA 2 になったが,BNPは1,950pg/mlに低下した後,3,110pg/dlまで再上昇した.発症より 2 カ月でEP持続静注療法を開始.開始後体血圧の低下など副作用を認めることなく,管理は比較的容易であった.ANP・BNPは徐々に低下し,開始 3 カ月後にはANP 677pg/ml,ANP 717pg/mlになった.また心臓カテーテル検査でも開始 3 カ月で,Rpiは32.6から11.0へ,CIは3.0から5.5へ改善がみられている.現在はNYHA 1 で全身状態は安定しており,在宅療法に向けて準備中である.【考察】低年齢発症のPAHにEP持続静注療法を導入できた症例は少ない.家族の理解と協力が必要であるが,年少児でも早期のEP導入で初期の症状改善および生命維持が可能となる.また,EPは導入初期には体血管拡張作用により心拍出量は増加し,その結果平均肺動脈圧が上昇し,血行動態の悪化を来すことがある.肺血管選択性の高いSLを先行して投与することで,重症例でもEPの導入が容易になると思われる.

閉じる