I-P-57
エポプロステノール,シルデナフィル,ボセンタンの 3 剤で治療中の特発性肺血管性肺高血圧(IPAH)の 4 歳男児例
高知大学
高杉尚志,寺内芳彦,臼井大介,細川卓利,藤枝幹也,脇口 宏

【はじめに】特発性肺血管性肺高血圧(IPAH)に対する治療薬として,エポプロステノール持続静注のほか,ボセンタン(2005年 4 月厚生省医薬食品局承認),シルデナフィル(未承認)の有効性が報告されている.われわれは,エポプロステノール持続静注導入後に,シルデナフィルとボセンタンを加えた 3 剤での治療を必要とした重症PPHの 4 歳男児例を経験したので,治療経過を報告する.【症例】生来健康な 4 歳男児.家族歴に特記すべきことなし.2005年 2 月から運動後の意識消失発作を繰り返し,2005年 4 月に右心不全精査加療目的で当科に紹介入院した.入院時,2 音が亢進した奔馬調律で,肝腫大,眼瞼浮腫,頸静脈怒張を認めた.胸部X線写真では,心胸郭比は60%で,右第 2 弓,左第 2 弓が突出し,心電図上,右房負荷,右室肥大を呈した.心エコーでは,解剖学的異常は存在せず,左室は著しく扁平で,右心房,右心室,肺動脈が拡張し,中等度三尖弁逆流(流速4.8m/s)を認めた.酸素吸入,利尿剤,PDE3阻害薬投与を開始し,血液凝固検査,肺血流シンチ,胸部単純CTを施行後,IPAHと診断した.ベラプロスト,ジゴシン,ワーファリンを開始したが,啼泣後の意識消失を伴い,NYHA 3~4 度の状態が続いたので,1 カ月後からエポプロステノール持続静注を開始した.意識消失は認めなくなったが,改善傾向に乏しく,シルデナフィルおよびボセンタン内服を順次追加導入した.現在,これら 3 剤併用で管理しているが,右心不全は持続し,NYHA 4 度で改善を認めていない.【結語】多くの小児IPAH患者は,エポプロステノール持続静注によって予後の改善が得られる.エポプロステノール抵抗例に対するシルデナフィルやボセンタン併用療法などにより効果的な治療の確立が望まれる.

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