I-P-61
小児心疾患治療におけるトラセミドの使用経験―薬用量・効果・副作用の検討―
秋田大学医学部小児科1),はらだ小児科医院2)
田村真通1),原田健二2),豊野学朋1),岡崎三枝子1),石井治佳1),島田俊亮1)

【背景】ループ利尿薬の一つであるトラセミドは,作用持続時間が長く吸収が安定していること,アルドステロン受容体拮抗薬としての作用を持つこと,電解質バランスを崩しにくいことなどフロセミドに比べての優位性が知られている.しかし小児における使用経験がいまだ少なく,標準投与量も確定されていない.【目的】後方視的に小児心疾患におけるトラセミドの投与量を検討し,その効果,安全性を検討することを目的とした.【対象】対象は先天性心疾患術前 6 例(年齢0.1~2.4カ月,体重2.1~5.7kg),先天性心疾患術後17例(年齢0.3~166.8カ月,体重2.3~53.0kg)の計23例である.【結果】術前例では,開始量0.40 ± 0.18mg/kg/day(0.20~0.71:中央値0.37),最大投与量0.45 ± 0.24mg/kg/day(0.20~0.91:中央値0.40)で,全例で満足すべき効果が得られた.有意の副作用を認めなかった.術後例では,開始量0.71 ± 0.35mg/kg/day(0.15~1.33:中央値0.69),最大投与量0.82 ± 0.39mg/kg/day(0.15~1.46:中央値0.74)であった.17例中10例で十分な効果が得られたが,効果不十分と判断した 5 例および高K血症の 2 例は多剤への変更が行われた.【まとめ】術前例に対しては0.20~0.71(平均0.40)mg/kg/dayを治療開始量とし,最大0.91mg/kg/dayまで漸増されていた.一方,術後例の開始量は0.15~1.33(平均0.71)mg/kg/dayで最大投与量は1.46mg/kg/dayに達していた.術後例で 2 例に高K血症を認めたが,術後循環不安定な状態であったことや併用したACE阻害剤との関連も疑われ注意が必要と思われた.【結語】小児初期投与量として,0.4mg/kg/dayは妥当と考えられた.ただし心臓手術後では適宜投与量の設定が必要と思われた.トラセミドは小児においても有用性が高く,安全に使用できる利尿薬と考えられた.

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