I-P-63
β遮断剤が著効した拡張型心筋症の 1 乳児例
市立札幌病院小児科1),北海道大学大学院医学研究科小児発達医学分野2)
古川卓朗1),武田充人2),村上智明2)

【背景】慢性心不全に対してのβ遮断剤の使用は成人にて有効性が確立されているが,乳児での報告は少ない.今回われわれは拡張型心筋症の乳児に対してβ遮断剤を導入し,著明な改善を認めたので報告する.【症例】症例は11カ月女児.嘔吐,食欲低下を主訴に当科受診.補液をしていったん帰宅したが,同日顔色不良,意識障害が出現し救急搬送された.努力呼吸,肝腫,四肢冷感,頻脈を呈し,聴診上奔馬調律であった.胸部X線上CTR 67%で肺うっ血を認め,心エコー検査では%LVDd 154%N,FS 0.19で,BNPは6,776pg/mlと異常高値を示し,重症心不全の状態であった.心電図にて心筋虚血の所見は認めず,CKは107IU/lと正常であった.拡張型心筋症と診断し,急性期心不全治療としてフロセミド0.1mg/kg/hrとミルリノン0.5μg/kg/minの持続点滴を開始,治療開始 2 日間で意識状態とバイタルの改善を認めた.6 病日よりシラザプリルを0.01mg/kg/日より0.04mg/kg/日まで漸増し,24病日にはミルリノンを中止,経口剤のみでの心不全管理が可能となり,%LVDd 137%N,FS 0.19,BNP 46pg/mlまで改善した.第79病日よりカルベジロール0.1mg/kg/日より開始,週ごとに0.1mg/kgずつ10週間で増量(体重増加のため最終的に0.86mg/kg/日まで増量)した.導入中,軽度の心拍数の低下はあったが血圧,尿量は保たれており,導入後はCTR 53%,%LVDd 107%N,FS 0.33,BNP 6.6pg/mlと著明な改善を認め155病日で退院,現在外来通院中である.【考案】本症例で心エコーでの応力速度関係を追跡したが,ACE阻害剤導入後も心収縮性は改善せず,カルベジロール導入終了後に改善した.乳児重症心不全に対しても最終的にβ遮断剤を導入することと,カルベジロールを1.0mg/kg/日まで増量することが重要と思われた.

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