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シベンゾリンは若年閉塞型肥大型心筋症の左室拡張能を改善させる
東邦大学医療センター大森病院小児科1),東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能科2)
中山智孝1),嶋田博光1),高月晋一1),松裏裕行1),原田昌彦2),佐地 勉1)

【背景】クラスIaの不整脈治療薬であるシベンゾリンは閉塞型肥大型心筋症(HOCM)の圧較差を軽減させることが知られている.今回,シベンゾリン投与を行った若年発症HOCM 2 例で拡張能に与える効果を検討した.【方法】超音波装置はPhilips社製sonos7500,拡張能評価は通常の僧帽弁流入ドプラ波形に加え,解析ソフトYD社製ICKソフト:Color Kinesis(CK)分析を用いて左室短軸断面の局所拡張能の評価を行った.【症例 1】19歳女性,Noonan症候群,8 歳時のHCM診断時は左室内に有意な圧較差なくベラパミル開始.13歳から左室内圧較差(PG)を認めプロプラノロール追加するも徐々に身体活動性低下と胸痛を自覚.心エコー下でシベンゾリン1.4mg/kg静注後,左室内PGは36→0mmHg,E/Aは1.08→1.75,心カテ検査でも同様,静注後 7 分で最大効果を示し心尖部左室圧(Sys/EDP)は146/23→95/17mmHgへ低下.シベンゾリン300mg/日で経口投与開始,2 カ月後の左室内PGは25mmHg,E/Aは1.6,6 分間歩行距離が107m増加した.CK分析では中隔から前壁にかけて拡張能が19%改善した.【症例 2】10歳男性,9 歳時に特発性HOCMの診断にてプロプラノロール開始となるも階段昇降時の疲労感が増強してきた.心エコー下でのシベンゾリン1.4mg/kg静注負荷にて左室内PGは87→44mmHg,E/Aは0.73→0.89へ改善した.シベンゾリン150mg/日経口投与開始,2 カ月後の左室内PGは52mmHg,E/Aは1.07,労作時息切れが改善した.CK分析では下壁と後壁の拡張能が30%改善した.【結語】2 症例ともふらつきや低血糖などの副作用はなく投与継続中である.シベンゾリンは左室内圧較差軽減のみならず,心エコー上の左室拡張能も改善させHOCMに有効である.

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