I-P-69
拘束型心筋症の 2 例
日本医科大学小児科1),さいたま赤十字病院小児科2)
上砂光裕1),池上 英1),渡邊 誠1),大久保隆志1,2),初鹿野見春1),深澤隆治1),勝部康弘1),小川俊一1)

拘束型心筋症(RCM)は心筋コンプライアンスの低下に伴う著明な拡張不全を主症状とするまれな疾患である.今回当科で 2 例のRCMを経験したので報告する.【症例 1】7 歳女児.2 歳時に肺炎にて近医入院した際,胸部X線上心拡大を指摘,心エコーで拘束型心筋症が疑われ,利尿剤,ACE阻害剤,β遮断薬等にて加療.しかし心不全兆候が出現し当科紹介入院となった.BNPは500~1,200(pg/ml)を推移,心電図上,両房負荷,右室肥大,2,3,aVF,V4,V5,V6 でのST低下,およびT波の平低化を認めた.心エコーにて左房の著明な拡大,MRを認めたが,明らかな左室内腔の拡大,左室壁の肥厚・菲薄化は認めなかった.心臓カテーテル検査で左室拡張末期圧28mmHg,平均肺動脈楔入圧20mmHg.MRI検査上,心膜の肥厚,石灰化等は認めず,拘束型心筋症の診断にてPD3阻害剤等も併用し加療.4 歳時に渡米して心移植を行った.現在順調に経過している.【症例 2】11歳男児.6 歳時の学校心臓検診で,心拡大,心電図異常を指摘され当科受診.心筋症を疑われ,フォローされていた.10歳時に心不全兆候出現,BNPも600~1,200(pg/ml)を推移.心電図上,2,3,aVFのST低下,左側胸部誘導のT平低化を認めた.心エコー・ドプラ所見にて左房の著明な拡大,収縮能軽度低下(EF 46%),拡張能の低下(e' = 3.78cm/sec)を認めた.心臓カテーテル検査で左室拡張末期圧22mmHgと上昇,平均肺動脈楔入圧22mmHg,右室拡張末期圧11mmHgとともに上昇.拘束型心筋症と診断した.現在,利尿剤,ACE阻害剤,β遮断薬等にて加療しているが,心不全症状も進行性であり,心移植の適応と考えている.【まとめ】拘束型心筋症はまれな疾患であるが,早期に発見して,心移植までの適切な治療,管理が重要であると考えられた.

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