I-P-70
心臓血管腫の 2 例
北海道立小児総合保健センター循環器科1),北海道立小児総合保健センター心臓血管外科2),札幌医科大学小児科3)
小林俊幸1),富田 英1),横澤正人1),畠山欣也1),伊藤真義2),印宮 朗2),高室基樹3)

【背景】新生児期に発症する心臓血管腫は非常にまれな疾患で心臓腫瘍の約 1~3%を占めるといわれる.当科で経験した心臓血管腫について文献的考察を加えて報告する.【症例 1】在胎40週 5 日,生下時体重2,750g,APS 8/8 で出生した男児.胎児エコーで左鼠径部と両心室内腫瘤を認めていた.生後,腹部,左大腿,両肩に多発性の腫瘤を認め,心エコーでは左右心室壁,心室中隔の腫瘤と心嚢液貯留を認めた.左肩腫瘤の生検を行い,血管外皮腫と診断された.生直後から血小板,フィブリノーゲン,ATIIIの減少,FDPの上昇があり,FOY,AT-3 製剤などを投与.日齢 4 よりINF-aの70日間連日皮下注を行い,退縮した.【症例 2】日齢25の女児.在胎39週 3 日,生下時体重2,984gにて出生.日齢25に不機嫌,多呼吸,チアノーゼ,点状出血を認め近医受診.血小板減少,心拡大を認め当センター紹介入院となった.心嚢液貯留と血小板減少,線溶系の亢進を認めた.直ちに心嚢ドレナージを施行し血小板増加,凝固因子の改善をみた.利尿薬の内服にて経過観察としたが,ドレナージ中止後,再度心嚢液貯留,血小板減少を認めた.心エコーにて左房を中心とした心房壁,心室壁の肥厚,心外膜の不整,大血管壁のエコー輝度の上昇を認めた.心膜開窓術を行い,利尿薬,抗血小板薬の内服を開始し心嚢液貯留と血小板減少は認めなくなった.直視下生検にて毛細血管の増加と血管マーカーCD34陽性細胞の増加を認め心臓血管腫と診断した.【考察と結語】Kasabach-Merritt症候群様の機序が想定される血小板減少と,心嚢液貯留を合併した心臓血管腫の 2 例を報告した.心臓内に腫瘤を認め,血小板減少や心嚢液貯留を認める場合には心臓血管腫を念頭に置くべきものと考える.

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