I-P-72
ショック後に胆道系優位の肝障害が遷延した 3 症例における臨床経過と病理組織学的検討
東京慈恵会医科大学小児科1),埼玉県立小児医療センター循環器科2)
安藤達也1),高木 健1),河内貞貴1),寺野和宏1),藤原優子2),小川 潔2),衞藤義勝1)

【はじめに】先天性心疾患の患児が急性循環不全(以下ショック)に陥り,その後脳障害,腎障害,播種性血管内凝固(DIC)などとともに肝機能障害を合併することはしばしば経験される.そのなか一過性のtransaminaseの上昇を伴う肝機能障害の後,transaminaseが改善した後も,高度の高ビリルビン血症が遷延する症例がまれに存在する.今回,われわれは先天性心疾患を合併する 3 症例において,ショック後の遷延性黄疸を経験した.そのうち 2 症例において病理組織標本を得られたので文献的考察を含めて報告する.【症例 1】重症大動脈弁狭窄:出生直後よりショック状態で左室収縮不良が顕著であった.日齢 0 に経皮的大動脈弁バルーン拡張術を施行し,血行動態の安定化が得られたが,生後 2 週頃より直接ビリルビン優位の高ビリルビン血症が出現した.生後 3 週にはT. Bil 28.6mg/dlまで上昇,生後 4 週からT. Bilは12~14mg/dlで推移した.生後 8 週に開腹胆道造影と肝生検を施行し,胆道造影で胆道閉鎖は否定された.肝生検では肝の基本構造は保たれているが,びまん性の類洞の虚脱があり門脈周囲に胆汁うっ帯がみられた.生後12週頃より徐々にT. Bilが低下し生後18週には3.9mg/dlまで低下した.【症例 2】純型肺動脈閉鎖・冠動脈低形成:出生後まもなくよりlipo PGE1を開始したが,左室収縮不良によりショック状態となった.肝機能障害,腎機能障害,DICを合併し,transaminaseは一時的に高度上昇を認めたが生後 3 週にはほぼ正常化した.生後 4 週ごろより,T. Bilが直接ビリルビン優位に急上昇傾向を認め,31.9mg/dlまで上昇した.【症例 3】右心性単心室・総肺静脈還流異常・無脾症:経過は当日提示.【考察】このような症例の経過については不明な部分が多いが,循環動態の安定を得られれば数カ月から半年で徐々に黄疸が軽減してくる場合が多いようである.肝細胞の再生が良好である反面,胆道系の機能回復には時間を要すると考えられる.

閉じる