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腹部の小児外科疾患に引き続き心臓外科手術を施行した新生児例の検討―致死性の胆汁うっ滞症候群の合併の経験から―
三重大学大学院医学系研究科小児発達医学1),尾鷲総合病院小児科2),山田赤十字病院小児科3),三重大学大学院医学系研究科胸部心臓血管外科4)
木平健太郎1),三谷義英1),早川豪俊1),澤田博文2),大橋啓之3),高林 新4),新保秀人4),駒田美弘1)

【背景と目的】新生時期に腹部外科疾患を合併した先天性心疾患患児(CHD)に対して,早期に腹部外科手術を行い,その後心臓外科手術を行うことが多い.今回,心臓外科手術を行った後に,致死的な胆汁うっ滞症候群の合併例を経験し,そのリスクと治療について検討した.【対象】1997年 4 月~2005年12月末に入院した新生児1,680例のうち,致死的染色体異常を認めず,小児外科疾患を合併したCHD患児 9 例.【結果】小児外科疾患の内訳は,十二指腸狭窄・閉鎖が 2 例,鎖肛が 2 例,食道閉鎖が 1 例,空腸閉鎖,腸穿孔,横隔膜ヘルニア,臍帯ヘルニアがおのおの 1 例.心疾患の内訳は,動脈管開存症(PDA)が 3 例,ファロー四徴症が 2 例,心室中隔欠損症,三尖弁異形成,大動脈縮窄複合,左心低形成症候群がおのおの 1 例.〈合併症例 1〉在胎38週 2 日,出生体重2,018g,Ap 8/9 にて出生.診断は十二指腸狭窄・PDA.日齢 4 に十二指腸吻合術,日齢12にPDA結紮術施行.日齢20頃から胆汁うっ滞症候群を合併し日齢33に胆嚢外ろうチューブ留置術行うが,高ビリルビン血症は増悪(D-Bil 49.0mg/dl)し,日齢80で死亡.経腸栄養は進まなかった.〈合併症例 2〉在胎33週 4 日,出生体重1,598g,Ap 1/3 にて出生.診断は胎便塞栓症候群・三尖弁異形成.日齢 5 に人工肛門造設術,日齢 7 にPDA結紮術,BTシャント施行.日齢13から断続的に経腸栄養開始.日齢30頃から胆汁うっ滞症候群を合併した後,minimal enteral feeding,糖質ステロイド大量投与で改善した.非合併 7 例では,平均在胎週数37週 1 日,平均出生体重2,238gで,消化管手術と心臓外科手術の間隔は平均8.4カ月(26日~23カ月)であった.【結語】胆汁うっ滞症候群合併例は非合併例に比べ,手術間隔が短かった.合併例では,minimal enteral feeding,糖質ステロイド大量投与の有効例があると考えた.

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