I-P-76
門脈大循環シャントにより高アンモニア血症・意識障害を来した内臓逆位の 1 例
久留米大学医学部小児科
家村素史,岸本慎太郎,籠手田雄介,石井治佳,前野泰樹,須田憲治,松石豊次郎

【背景】TCPC(total cavopulmonary connection)術後には頻脈性不整脈,蛋白漏出性胃腸症,易血栓形成性,房室弁逆流による心不全の増悪などが知られており,比較的頻度も高い合併症であるため,さまざまな予防法,治療法が試みられている.しかしながら,門脈大循環シャントなどのまれな合併症に関しては原因特定・治療に難渋することが多い.【症例】17歳,男性,出生時に左側相同,内臓逆位,右胸心,両大血管右室起始,共通房室弁,肺動脈狭窄と診断.5 歳時にbidirectional Glenn術,9 歳時にTCPC術およびペースメーカ留置術を施行,16歳時に共通房室弁の逆流増悪,発熱,腹水貯留のため共通房室弁置換術(SJM 33mm)施行された.術後は症状も安定し,利尿剤,ワーファリン,β-blocker,ACE阻害剤にて外来経過観察中であった.18歳時に突然の意識障害,見当識障害,傾眠傾向となり当院受診.心エコーにてRVEF 10%,LVEF 47%と心室機能は低下,頭部CT上,梗塞・出血は認めなかった.血液検査では貧血・肝機能異常は認めなかったが,BNP 486pg/ml,NH3 242μg/dlと上昇しており,高アンモニア血症からの意識障害と考えられた.原因検索のため,門脈大循環RIを施行したところ,心臓/肝臓比で0.916と異常高値であり,門脈大循環シャントが原因と考えられた.腹部エコーではシャントの部位はペースメーカのため同定できず,現在,抗生剤の内服・食事療法で抗アンモニア療法を施行しつつ,門脈造影でシャント血管の同定し,今後の治療方針を決める予定である.【考察】内臓逆位には門脈欠損を合併するとの報告は散見される.門脈大循環シャントはまれな合併症であり,本症例も原因の特定はできていないが,TCPC術前・術後の静脈圧が影響し,シャント血管が開通し,高アンモニア血症・意識障害を呈した可能性が考えられた.

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