II-B-1
小児期におけるsimple AVRとKonno手術の検討
東京慈恵会医科大学心臓外科
香川 洋,森田紀代造,橋本和弘,田口真吾,黄 義浩,木ノ内勝士,中村 賢

【目的】小児期大動脈弁置換術(AVR)は時に弁輪拡大術を必要とする.また,成長に伴うpatients-prosthesis mismatchや心機能の問題もある.当院における小児期AVR,弁輪拡大術非施行例(simple AVR)と施行例(Konno手術)について比較,検討した.【対象】1990~2005年に当院にて施行した15歳以下,機械弁を用いたAVR症例10件を対象,うち 5 件に弁輪拡大術を施行した.患者年齢はsimple AVR群(A群)で8.8 ± 4.5歳,Konno手術群(B群)で10 ± 3.9歳,両群に有意差を認めなかった.術前診断はA群でAR 4 例,IE 1 例,B群でAS 3 例,AR 1 例,PVE 1 例,合併疾患はA群でVSD 2 例,TOF 1 例,DORV 1 例,truncus 1 例,B群でTGA 1 例であった.【結果】術後平均観察期間はA群で5.2 ± 5.0年,B群で10.3 ± 4.5年,遠隔死亡,血栓,出血などの副作用を認めなかった.A群での再手術症例なく,B群 1 例で再手術(PVE)を認めた.手術時間,人工心肺時間,大動脈遮断時間はA群で490 ± 95分,160 ± 82分,119 ± 67分,B群で453 ± 17分,205 ± 27分,172 ± 24分,両群にて有意差を認めなかった.使用人工弁はA群でSJM 4 例,ATS 1 例,B群 5 例すべてSJMであった.人工弁サイズはA群で23 ± 2.4mm,B群では適切な弁輪拡大にてA群と同等サイズ,23 ± 9.3mmの人工弁挿入が可能であった.術後 1 年目UCGでは,EFはA群で65.4 ± 4.6%,B群で65.0 ± 3.3%と有意差を認めなかった.大動脈弁圧較差はA群で21.9 ± 1.6mmHg,B群で4.0 ± 0mmHg,B群で有意に低値であった(p値 = 0.02).抗凝固は両群ともワーファリン + チクロピジンを投薬,特に問題を認めていない.5 年生存率は両群100%であった.【結論】小児期における大動脈弁輪拡大術も含めたAVR術後成績は良好であった.また,狭小弁輪症例に対して積極的にKonno手術を施行,simple AVRと同等サイズの人工弁挿入が可能であり,その成績もsimple AVRと同等であった.小児期AVRにおいて,狭小弁輪症例に対するKonno手術は有効と考えられた.

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