II-B-3
小児Ross(Ross-Konno)手術の中期遠隔成績
京都府立医科大学附属小児疾患研究施設小児心臓血管外科1),京都府立医科大学大学院医学研究科発達循環病態学2)
春藤啓介1),山岸正明1),新川武史1),宮崎隆子1),久岡崇宏1),井上知也1),後藤智行1),山南将志1),浜岡建城2)

【目的】当院における小児Ross(Ross-Konno)手術の中期遠隔成績を術後心機能,弁機能の観点から検討した.【対象と方法】対象は1997年11月~2005年12月にRoss(Ross-Konno)手術を施行した21例のうち18歳以下の17例,平均年齢11.5歳,平均体重33.5kg.AS 5 例,AR 7 例,ASR 5 例で 9 例が二尖弁であった.術式は全例pulmonary autograftによる大動脈基部置換を行い,4 例で大動脈-僧帽弁線維性連続を楔状切除し弁輪縫縮を,3 例でKonno法による弁輪拡大を行った.右室流出路再建(RVOTR)は無冠尖付大動脈壁とGore-Tex(GT)2 弁付きsinus形成GTパッチによるhybrid修復術14例,GT 3 弁付き心外導管 2 例,homograft 1 例.【結果】術後観察期間は22~98カ月(平均57.6),手術死亡,遠隔死亡ともになく全例NYHA I度.術後心臓カテーテル検査ではPCW 6~15mmHg(平均9.7),LVEDV 90~159%N(平均121),LVEF 39~79%(平均62),LV-Ao間圧較差 0~7mmHg,大動脈弁輪径108~126%N(平均117)で左室機能は良好に保たれており,CVP 3~12mmHg(平均6.5),RVEDV 96~144%N(平均113),RVEF 48~60%(平均53),RV-PA間圧較差 0~45mmHg(平均22.4)で右心機能も良好に保たれていた.術後心エコーでPRはnone-trivial 4 例,mild 12例,moderate 1 例で,hybrid修復術例の肺動脈弁輪径は術後早期(平均14カ月)で84 ± 17%N,遠隔期(平均57カ月)においても79 ± 19%Nと自己大動脈壁の成長の可能性が示唆された.再手術症例はなかったが,RV-PA間圧較差40mmHg以上の 2 例にバルーン拡張術が行われた.【考察】当院での小児Ross(Ross-Konno)手術における術後心機能,弁機能は良好で中期遠隔成績は満足できるものであった.RVOTRにおいて無冠尖付Ao壁利用は弁機能温存と成長の点で有利であり高度AS例を除いて適応できると考えられ,またautograftの成長の可能性,抗感染性,また抗凝固療法が不要であることから小児大動脈弁疾患ではRoss手術は優れた術式であると考えられた.

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