II-B-4 |
大動脈弁狭窄・閉鎖不全例に対するRoss手術の中期遠隔期成績 |
福岡市立こども病院循環器科1),福岡市立こども病院新生児循環器科2),福岡市立こども病院心臓血管外科3)
成田純任1),石川司朗1),松村昌治1),阿部正徳1),石川友一1),中村 真1),牛ノ濱大也1),佐川浩一1),総崎直樹2),角 秀秋3) |
【背景】AS/ARの治療成績は乳幼児期のバルーン弁形成術,Ross手術の治療導入により改善してきた.当院のRoss手術はautograftによる大動脈弁置換と手作りの 3 弁付きPTFE graftによる右室流出路再建を施行している.機械弁置換(AVR)に比し手術侵襲が大きい本法は術後の両半月弁機能不全に注意を要し,長期成績は不明である.【目的】Ross手術の中期遠隔期成績を明らかにし,その問題点を検討する.【対象】当院が経験したRoss手術19例(7.3~23.7y:中央値13.4,Ross-Konno手術は除く)と機械弁置換法(AVR群)18例(5.3~15.5y:中央値12.5)【方法】両群の上行大動脈血流速度(Ao flow),treadmill運動負荷時のpeak HR(年齢・性をマッチさせた% normal),peak VO2(同% normal)および内科管理の実態を術後早期から 5 年で比較し,Ross群はAR,肺動脈血流速度,PRも評価した.血流速度は心エコーによる.【結果】データは平均値(術後期間)で表し,Ross群:AVR群の順で示す.Ao flowは102:140*(術後早期),102:224*cm/s(5y)[*は統計学上の有意差を表す;p < 0.05]で有意にRoss群で低く,AVR群で経年的に上昇する.peak VO2(%N)は97:85%(3y),98:83%(5y)で統計学的有意差なし.peak HRは83:96%(早期),98:99%(2y)で術後半年以降は差を認めなかった.遠隔期Ross群のautograft閉鎖不全は 1 例を除き 1 度以下であり,3 弁付きPTFE graft狭窄の進行は認めず,PRも全例 1 度以下であった.現時点でRoss群の95%は無投薬で,AVR群は39%で抗心不全薬の内服,および全例で抗凝固療法が行われていた.【考案】AS/ARに対する当院のRoss手術は半月弁機能および術後内科管理の面でAVR群より有利であり,運動耐容能もAVR群と遜色ない.運動が活発で酸素摂取量が多く求められる小児期,思春期に,Ross法はAVRに比較して血行動態上また抗凝固療法が不要な点でも都合のよい術式といえる.今後も半月弁機能を中心とした長期的観察が望まれる. |
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