II-B-5
自己弁温存が困難な大動脈弁病変に対する術式選択の検討
千葉県循環器病センター心臓血管外科1),千葉県循環器病センター小児科2)
松尾浩三1),浅野宗一1),平野雅生1),鬼頭浩之1),林田直樹1),村山博和1),東 浩二2),川副泰隆2),立野 滋2),丹羽公一郎2),龍野勝彦1)

Ross手術は抗凝固療法を必要とせず移植肺動脈組織の成長が期待できる点から適応が拡大されている.一方で狭小大動脈弁輪に対するKonno手術や生体弁置換などの選択肢があり手術リスクやQOLを考慮した術式選択が可能である.最近 6 年間の肺動脈弁狭窄や変形を伴わない大動脈弁病変のなかで自己弁温存が困難であった先天性心疾患連続10例の術式選択について検討した.【症例】(1)Ross ± Konno手術施行 6 例;年齢 5~28歳(平均14.0歳),いずれも二尖大動脈弁に合併した狭窄(AS)または閉鎖不全(AR).1 例はactive IEの緊急例.右室流出路は三弁付き心外導管で再建した.Ross選択理由は妊娠可能女性 3(女児 2),activeな生活希望 2,脊椎手術待機 1 であった.(2)Ross不適判断 2 例;VSD,AR術後 8 年のAR 17歳女性:肺動脈二弁がVSD閉鎖に使用され,Ross不適と判断し生体弁置換施行.大動脈離断修復後のmuscular VSD + AS 1 歳女児:大動脈弁交連切開とVSD閉鎖施行するも弁輪径が 8mmと小さくAS,VSDが遺残したためKonnoおよび左室側VSD再閉鎖を施行.(3)危険度の低い手術希望 2 例;VSD閉鎖後17年のAR 19歳男性およびKonno後10年再ASの16歳男性;それぞれ器械弁置換,再Konnoを行った.【結果】Ross症例は死亡なく術後追跡機間 4~80カ月.1 例にmildな大動脈弁逆流を認めるのみでLVEF 56 ± 2%,LVEDV 103 ± 11%Nと良好.肺動脈側も圧較差 4~20mmHgと軽度であった.AVR,再Konno症例は経過良好であるが乳児Konno例では左室側でも多孔性VSDのため短絡が遺残し術後 6 カ月に右心不全で失った.【結語】Ross手術は中長期遠隔においても弁機能および心機能は良好であり小児や若年女性のみならず高いQOLを望む症例でも第一選択として提示してよい結果であった.乳児期Konno手術は弁輪拡大率が高く心機能低下が避けられないためRoss/Konnoの選択が良いと考えられた.VSD + AR術後で肺動脈弁輪が使われている例では適応を慎重にすべきと考える.

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