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II-B-6 |
小児期大動脈弁置換術の変遷 |
大阪大学大学院医学系研究科外科学講座心臓血管外科1),大阪大学大学院医学系研究科小児発達医学講座小児科2)
帆足孝也1),市川 肇1),福嶌教偉1),康 雅博1),小垣滋豊2),那須野明香2),高橋邦彦2),澤 芳樹1) |
【背景】小児期に大動脈弁置換術(AVR)を要する症例の治療戦略では,心筋ダメージの可逆性維持と可能な限りの再弁置換回避という相反する命題を考慮する必要がある.当施設の小児期AVR症例を後方視的に検討した.【対象】2005年までの40年間に先天性心疾患患者に対してAVRを行った37例のうち,手術時年齢18歳以下の10例.術前診断はVSD + AR 3,congenital AS(cAS)3〔うち大動脈弁形成術(AVP)後 2〕,cTGA 2〔修復術後大動脈弁閉鎖不全(AR)〕,PA/VSD 1(修復術後AR)およびTaussing-Bing 1(修復術,AVP後AR).手術時年齢は平均12.3歳(4~17),体表面積は平均1.17m2(0.6~1.56),男女比 6:4.【方法】術後平均観察期間11.6年(3 カ月~38年)における生存率,再弁置換回避率および狭小弁輪例に対する治療経過を検討.【結果】使用した弁とサイズはSJM 4(#21:1,HP#19:2,Regent#17:1),Carbomedics 2(#21:1,#19:1),Bijork Shiley 2(#25:1,#21:1),#3Disc 1 および#25homograft 1.手術死亡はなく累積生存率は 5,10,15年で88.9,88.9,71.1%.再AVRはcASの 1 例と,17歳時の初回AVRにhomograftを用いたVSD + ARの 1 例で,累積再弁置換回避率は 5,10,15年で100,80,53%.AV径 < 20mmの狭小弁輪例は 3 例で,1(cAS):4 歳時にNicksによる弁輪拡大(19→22mm)を併施しSJM #21を縫着したが12年後に機能的ASにより再びManougeanによる弁輪拡大を行ってATS AP#22を縫着.2(cAS):1 歳時DotyによるAVP施行後,8 歳時にYamaguchi法による弁輪拡大(18→20mm)を併施しCarbomedics#19を縫着.3(PA/VSD):11歳時に19mmの弁輪径に対して弁輪拡大を行わずSJM Regent#17を縫着.いずれも術後観察期間は 5 年未満であるが,大動脈弁流出血流の加速は認めていない.【まとめ】(1)小児期に大動脈弁置換術を要する症例の再弁置換率は高率である.(2)有効弁口面積の大きな小口径の機械弁が使用可能になり今後治療戦略は変化する可能性がある.(3)狭小弁輪例に対する治療戦略の妥当性の評価には今後の経過観察が必要である. |
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