II-B-10
左室型単心室(SLV)患者でのFontanおよび心室中隔造成術後遠隔期の比較
国立循環器病センター小児科1),国立循環器病センター心臓血管外科2)
大内秀雄1),脇坂裕子1),林  環1),山田 修1),越後茂之1),八木原俊克2)

【背景】左室型単心室(SLV)を有する先天性心疾患患者の修復の選択では大きくFontan型と心室中隔造成術がある.可能であれば単心室血行動態を二腔心へ修復する心室中隔造成術が好ましいが,必ずしもその手技は容易でなく,一方でFontan型修復の成績が向上し,安定してきている.しかしながら,いずれの術式であってもその長期的予後は明確ではない.【目的】SLV患者での長期的な予後を運動負荷試験の成績を中心に,Fontan術後と心室中隔造成術後を比較し,SLVに対する治療戦略を再考する.【方法と結果】SLV患者はFontan手術後15例(F群:24 ± 5 歳)と心室中隔造成術13例(S群:18 ± 4 歳)の計28例で,術後経過はおのおの15 ± 3 年,14 ± 4 年であった.S群ではペースメーカ植込み術が 7 例で(PMI群),また房室弁の形成あるいは人工弁置換術が 5 例(AVVR群)に施行されていた.全例に呼気ガス分析を併用した運動負荷試験を施行し,最高酸素摂取量(peak VO2:ml/kg/min)を測定した.peak VO2ではF群とS群に有意な差はなかったが(F群 = 22 ± 3 vs. S群 = 26 ± 9,ns),S群のAVVR群でない 8 例(30 ± 8)ではAVVR群(19 ± 2)およびF群に比べ有意にpeak VO2は高かった(p = 0.001).S群ではPMI群はそうでない群に比べpeak VO2は低い傾向にあったが(p < 0.1),F群とS群のAVVR群には有意な差はなかった(p = 0.18).【結論】SLVに対する心室中隔造成術には,房室弁機能不全を回避できれば,長期遠隔期のより良い運動耐容能を期待できる.

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