II-B-11
小児期肥大型心筋症の全国調査結果
日本小児循環器学会学術委員会「小児期肥大型心筋症の全国調査」研究委員会
西川俊郎,佐地 勉,唐澤賢祐,寺井 勝,市田蕗子,塚野真也,小垣滋豊

本邦における小児期肥大型心筋症のまとまった統計はなく,本研究では同疾患の実態を明らかにするために全国調査を行った.調査アンケートは日本小児循環器学会評議員施設を含む全国主要施設に郵送し,39施設248例の回答があった.内訳は男151例,女97例,平均年齢6.4歳であり,定型的・肥大型心筋症162例,拡張相肥大型心筋症 3 例,心尖部肥大型心筋症16例,Noonan症候群など全身疾患を伴う症例67例であった.定型的・肥大型心筋症について分析すると,診断時年齢は平均7.7歳で,初診時症状は,無症状114例(70%),動悸 4 例(3%),胸痛 6 例(4%),診断のきっかけは,心電図異常82例(51%),心雑音34例(21%),脈不整 3 例(2%)であった.家族歴ありと回答のあった例は58例(36%)であった.治療としてはβ遮断薬64例(40%),利尿薬16例(10%),ACE阻害薬17例(10%),Ca拮抗薬23例(14%),抗不整脈薬14例(9%)が投与され,無投薬は61例(38%)であった.外科的処置として,心筋切除術 1 例,経皮的中隔心筋焼灼術 2 例が施行されていた.調査時点で生存例は142例(88%)で平均follow-up期間は6.1年,死亡例は 5 例(3%)で,診断からの期間は平均4.8年,死亡状況は突然死 3 例,心不全死 1 例,肺梗塞 1 例であった.本調査により,本邦における小児期肥大型心筋症の実態が明らかとなり,本疾患の診断,治療,生活管理等についての指針づくりの目安になると思われた.

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