II-B-51
左心低形成症候群の中長期遠隔成績―Norwood手術におけるRV-PA conduitは遠隔成績にいかなる影響を及ぼすか?―
国立循環器病センター心臓血管外科1),国立循環器病センター小児科2)
鍵崎康治1),八木原俊克1),萩野生男1),石坂 透1),越後茂之2)

左心低形成症候群(HLHS)に対するNorwood手術において,RV-PA conduit(RVC)はBT shunt(BT)に比べ,急性期成績の向上に寄与していると考えられが,第二期手術が早期乳児期に必要となることが懸念され,またその後のFontan到達への影響は明らかでない.当施設では,1999年にRVCを導入したが,2002年以降第二期手術以降の諸条件を考慮し低体重,有意な房室弁逆流,肺静脈閉塞性病変などの危険因子のないstandard riskのHLHSに対してはBTを用いたNorwood手術を行っている.過去10年間のNorwood手術耐術例からBTとRVCの中長期遠隔成績に与える影響を検討した.【対象と方法】1995~2005年に34例(平均日齢6.4日,平均体重2.7kg)に対しNorwood手術を施行した.1997年に人工心肺の低充填量化,下行大動脈送血の併用を開始し,1999年にRVCの導入,2001年にMUFの導入を行った.25例にBTを,9 例にRVCを用いた.【結果】全体の耐術は17例,50%(前期 5 年 4/15:27%,後期 6 年13/19:68%)であった.17例の耐術例のうちBTは11例,RVCは 6 例であった.BT11例のうち 1 例は第二期手術前に房室弁逆流に対する手術介入して死亡,他の10例は平均8.6カ月でBDG施行,うち 6 例はFontan到達した.Fontan非到達 4 例はBDG後感染症による病院死亡 1(BDG施行時房室弁置換同時施行例),左肺動脈低形成によるFontan非適応 2,Fontan待機が 1 であった.RVC 6 例のうち 2 例は第二期手術前に心不全死(房室弁逆流),他の 4 例は平均4.7カ月でBDG施行,うち 3 例はFontan到達した.Fontan非到達 1 例は左肺動脈閉塞によるFontan非適応であった.待機中を含めたFontan到達率はBT:64%,RVC:50%であった.【まとめ】RVCは危険因子を有するHLHSに対するNorwood手術の成績向上には寄与していると考えられるものの,第二期,第三期手術への到達率を向上してはいない.BT,RVC症例ともに房室弁逆流や左肺動脈狭窄がFontan到達への妨げの要因となる.

閉じる