II-B-54
純型肺動脈閉鎖症に対する 2 心室修復症例の検討
福岡市立こども病院心臓血管外科1),福岡市立こども病院新生児循環器科2),福岡市立こども病院循環器科3)
園田拓道1),角 秀秋1),深江宏治1),中野俊秀1),檜山和弘1),朴 範子1),橘  剛1),総崎直樹2),石川司朗3),福重淳一郎3)

【目的】純型肺動脈閉鎖症(PA/IVS)に対する外科治療の方針は術前の解剖学的要因により異なるが,今回,最終手術として 2 心室修復(BVR)を行った症例について検討した.【対象】1981~2005年に外科治療を行ったPA/IVS 90例のうち,最終手術としてBVRを行った25例を対象とした.初回手術として23例にBrock手術または右室流出路拡大術を行い 2 例に体-肺シャント術を行った.最終手術時の年齢は,3.1 ± 3.2歳(14日~15.3歳)であり,右室流出路再建,ASD閉鎖のほかにRV overhaulを10例に行った.【結果】初回手術時の右室容量(RVEDV)は58.6 ± 18.2(36.3~101.6)%N,三尖弁輪径(TVD)は89.5 ± 17.9(56.5~116.6)%Nで,最終手術時のRVEDVは71.1 ± 25.9(33.9~147.4)%N,三尖弁輪径は96.0 ± 18.7(64.5~133.5)%Nであった.最終手術後の観察期間は8.0 ± 5.6年(1 日~19.1年),5 年生存率は88.0%であった.これは同時期に行ったPA/IVSに対するone and one half repair(1.5VR)症例(n = 6)の100%とuniventricular repair(UVR)症例(n = 28)の96.3%とは有意差を認めなかった.BVR術後遠隔期の血中ANPは72.3 ± 40.9pg/ml,BNPは49.2 ± 34.9pg/mlとやや高値を示し,1.5VR症例ではANPは146 ± 38.5pg/ml,BNPは62.9 ± 20.6pg/mlと有意に高く,UVR症例ではANPは28.9 ± 19.0pg/ml,BNPは26.7 ± 27.0pg/mlと有意に低かった.BVR症例のなかでANP,BNPが高値であった症例は三尖弁の形態・機能異常を示すものが多かった.なお,生存22例中 7 例が現在,右心不全のため心不全治療薬を投与されている.【結論】PA/IVSに対するBVRの手術成績はほぼ満足できるものであるが,術後遠隔期の右心不全のためにQOLに問題を有する症例が認められた.RVEDVあるいはTVDのサイズのみならず三尖弁の形態・機能異常を示す症例については術後遠隔成績を踏まえた総合的な治療戦略が必要と思われる.

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