II-B-55
純型肺動脈閉鎖症に対する手術―右室冠動脈瘻および小さい右室が与える影響―
北海道大学病院循環器外科
若狭 哲,村下十志文,窪田武浩,杉木宏司

純型肺動脈閉鎖症(PAIVS)の外科治療に際しては,右室冠動脈瘻(RVCF)の存在や右室の解剖学的構造が大きな影響を持つ.【方法】1992~2005年に17例のPAIVS患者に初回手術を行った.2 例にEbstein奇形を認めた.初回手術時体重は3.5kg(2.2~6.9),年齢は36.5日(19~92)であった.RVCFはmajor(両側冠動脈と交通,冠動脈が著明に拡大),minor(片側のみ)の 2 群に分類した.【結果】RVCFを13例に認めた(major 7 例,minor 6 例).Minorの 1 例で右冠動脈のRV dependent coronary circulation(RVDCC)を認めた.三尖弁径のZ-valueは中央値 -3.37(6.90~+2.43)で,右室漏斗部は心エコー上 7 例でほぼ正常,5 例は小さく,5 例では認めなかった.初回手術は12例に体肺動脈短絡術(BTS)を,1 例にtrans-pulmonary valvotomy(TPV)を,4 例に両方を行った.手術死亡はなく,遠隔期死亡もmajor RVCFと肺静脈狭窄を合併する 1 例の突然死(2 年後)のみであった.RVDCCの 1 例で術後PMIを認めたほか,major RVCFの 1 例で術当日に循環動態の悪化を認め蘇生を必要としたがその後の経過は良好であった.10例が最終手術に到達した〈TCPC 8 例,biventricle repair(BVR)2 例〉.全症例中 5 例がZ-value -2.0以上で,うち 2 例はmajor RVCFと小さな漏斗部を認めTCPCを行った.3 例は漏斗部が正常でRVCFもnone~minorであり,2 例がBVR施行,1 例は待機中である.経過中,TPVを行った 5 例中 2 例にRVCFのregressionを認め,TCPC後の 2 例にprogressionを認めた.【結語】右室漏斗部が正常に近く,major RVCFがない症例はBVRの適応となる可能性があると考えられた.major RVCFやRVが小さいことは手術成績には影響していなかった.右室圧がsuprasystemicで経過する症例では遠隔期にRVCFや冠動脈病変のprogressionを認める可能性があり,注意深いfollow-upが必要である.

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