II-B-56
Sinusoidal communicationを合併したPAIVSに対する右室減圧術の適応の考察
千葉県こども病院心臓血管外科1),千葉県こども病院循環器科2)
渡辺 学1),青木 満1),上松耕太1),藤原 直1),菅本健司2),犬塚 亮2),建部俊介2),中島弘道2),青墳裕之2)

【目的】sinusoidal communication(SC)を伴うPAIVS症例の冠動脈形態に応じた治療戦略を考察.【対象】当院で手術を受けたPAIVS 36症例中右室造影でSCを認めた15例.【検討項目】選択術式に応じ右室非減圧群と右室減圧群に分類し,以下項目を検討.(1)右室造影にてSCを介し造影される冠動脈分枝,(2)冠動脈順行性造影不良所見,(3)左室壁運動異常,(4)臨床経過.【結果】右室非減圧群到達術式:TCPC 8 例,BCPS 1 例,BTシャント 3 例.右室と交通を持つ冠動脈分枝:RCA + LAD + LCX;4 例,RCA + LAD;5 例,RCA;2 例,LAD;1 例.冠動脈順行性造影不良所見:LAD造影不良 6 例,RCA起始部閉塞 1 例,LMT閉塞 1 例.左室壁運動異常:LAD離断を合併するBTシャント症例 1 例に#2,3 領域の壁運動低下.臨床経過:左室壁運動異常を認めた 1 例がASD拡大術後広範前側壁梗塞にて死亡.術前右室圧/左室圧比は0.85.ほかは全例生存.TCPCは心室細動下,または順行性心筋保護を用いた大動脈遮断下に施行され,術後左室造影で壁運動低下所見出現例なし.右室減圧群到達術式:one and a half repair 1 例,RVOTR + BTシャント 1 例,Brock + BTシャント 1 例右室と交通を持つ冠動脈分枝:RCA + LAD + LCX:1 例,RCA + LAD:1 例,LAD:1 例冠動脈順行性造影不良所見:RVOTR + BTシャント,Brock + BTシャントの 2 症例にLAD順行性造影不良所見あり.臨床経過:one and a half repair症例は生存しており,RVOTR術後経過中SC消失し,順行性造影で正常冠動脈形態を認めた.LADの順行性造影不良所見を認めた残りの 2 症例は外来経過観察中突然死した.【結論】左冠動脈前下行枝の順行性造影不良症例に対する右室減圧術の成績は不良であり,冠動脈形態に応じた術式決定が今後の課題となる.一方,冠動脈形態に関わらず,TCPC術施行後の左室壁運動異常は認めず,人工心肺中の一時的な右室圧減圧による冠還流低下が術後心機能に及ぼす影響は少ないと考えられた.

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