II-C-10
Fontan循環におけるDamus-Kaye-Stanselの適応と遠隔成績
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科心臓血管外科
笠原真悟,藤井泰宏,吉積 功,神吉和重,三井秀也,石野幸三,泉本浩史,赤木禎治,佐野俊二

【目的】解剖学的および機能的単心室症において,大動脈弁下狭窄(SAS)は重要な予後規定因子になるだけでなく,Fontan手術の到達率にも大きく影響するためわれわれはDamus-Kaye-Stansel(DKS)吻合を積極的に行っている.今回,TGA型の大血管関係を有し,体心室から大動脈への経路が直線的でない症例にも駆出流のエネルギー損失軽減目的でDKS吻合の適応拡大を行った.【対象】1993年 6 月~2005年12月にDKS吻合を行ったFontan手術適応症例 32例(単心室型23例,2 心室型 9 例).平均年齢31カ月で平均観察期間は38.6カ月であった.体心室から大動脈への流速が1.4m/s以上を有意な大動脈弁下狭窄とし,筋性狭窄,遺残心室腔や心室間交通の狭小化例が含まれた.さらに明らかに狭窄が認められないが,TGA型の大血管関係で体心室から大動脈への流出路が直線的でない症例も対象とした.【結果】明らかにSASを認めた症例が20例,SASの顕在化が予想される症例が12例.DKS吻合をGlenn手術前に 2 例,Glenn手術時に24例,Fontan手術時に 5 例行った.Fontan手術後SASが顕在化し,DKS吻合を行った症例が 1 例であった.3 例でARが軽度悪化したが,いずれも極軽度であった.2 例でPRがmildからmoderateに悪化し,1 例でmoderateのPRが新規出現した.4 例でtrivialのPRを認めたが,循環動態への影響は認めなかった.DKS吻合部軽度狭窄を 1 例で認めた.【結論】DKS吻合の予後は良好であるがAR,PRが増加する症例があり,経過観察が必要である.また,段階的にFontan手術を施行する場合はGlenn手術時にDKS吻合を行うことで後負荷が軽減したり,駆出血流のエネルギー損失軽減目的で積極的に適応とすることがFontan手術をより安定させる可能性があり,長期的予後も含めた検討が必要である.

閉じる