II-C-11
Fontan術後の心室―大動脈サイズの経時的変化―
国立循環器病センター小児科
脇坂裕子,大内秀雄,津田悦子,山田 修,越後茂之

【背景】ファロー四徴など先天性心疾患患者の大血管の成長に伴う拡大は将来の心事故との関連が指摘されているが,術後低心拍出となるFontan術後患者での血管系の発育様式は不明である。【目的】Fontan術後症例の左室から下降大動脈に至る血流導管としての経路の発育状態を検討する.【方法】当センターにおいて,10年以上経過観察を継続しているFontan術後13症例(年齢13~24歳,男:女 = 7:6,身長0.73~1.74m,三尖弁閉鎖10例,両大血管右室起始 2 例,左室型単心室 1 例)を対象に,左室または大動脈造影から大動脈径を計測した.測定部位は,大動脈弁輪部,バルサルバ洞,sino-tubular junction(STJ),上行大動脈膨大部,横隔膜レベル,拡張終末期径(正面像),拡張終末期径(側面像),sinus の高さの 8 カ所で,収縮終末期(s)と拡張終末期(d)において測定した.対照群として,有意な短絡を認めない(Qp/Qs = 1.0)の心室中隔欠損および 動脈管開存コイル塞栓術後の41症例(年齢9.7~34.9歳,中央値16,男:女 = 17:24,身長0.82~1.77m)の大動脈径を同様に計測し,各パラメータについて回帰曲線を描いて対照群とFontan術後症例の大動脈径の経時的変化を比較検討した.【結果】Fontan群および対照群では,すべての測定部位で,身長と有意な直線相関を示したが,対照群に比べ(r2 = 0.702~0.832),Fontan 群(r2 = 0.315~0.571)での両者の相関性は低下した.大動脈弁輪,バルサルバ洞,STJのサイズでは両群に差はなかったが,STJ,上行および下降大動脈の径と身長との回帰直線のslopeはFontan群で小さく,特に下行大動脈で有意に小さかった.【結語】Fontan術後症例では,成長に伴い動脈血流導管系の発育はみられるが,発育状況は個人差が大きい.中枢側のサイズは血行動態とは関連なく,より末梢動脈血流導管系の発育はより低心拍出量と関連することが示唆される.

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