II-E-3
乳児期発症のDCM 5 症例の検討―その臨床的特徴,治療と予後について―
日本医科大学小児科
深澤隆治,池上 英,渡邉美紀,内木場庸子,倉持雪穂,大久保隆志,勝部康弘,上砂光裕,初鹿野見春,渡邊 誠,小川俊一

【背景】拡張型心筋症(DCM)ではβ blocker,angiotensin II(Ang II)阻害剤が治療薬として広く認知されるようになり,予後の改善に寄与しているがいまだ心臓移植が必要になる症例も多い.特に乳児期発症のDCMは予後が悪いとされ,症例が少ないことから治療に対する効果も不明である.今回乳児期発症のDCMを 5 症例経験したので,その臨床的特徴,治療および予後について検討した.【対象・方法】対象は,2000年 7 月~2005年10月にDCMを発症し当科で加療された乳児期発症DCM 5 症例(1 カ月 2 例,3 カ月 2 例,9 カ月 2 例)である.9 カ月の症例は一卵性双生児であり,1 子がCHFで発症後,他方の児(A症例)が検査で診断されたほかは全例CHFで発症している.おのおのの症例の臨床経過,治療経過,予後,心電図およびLVEF,BNPを検討した.【結果】発症時のLVEFは,それぞれ33,36,26,25,45%であり,A症例を除き40%以下であった.BNPはそれぞれ3,290,763,1,140,4,280,4.6pg/mlとA症例以外は全例高値であった.治療は全例に利尿剤,aspirin,β blocker,Ang II阻害剤が用いられ,心不全の程度により低用量のカテコラミンが使用されていた.生存例は,A症例と治療開始 1 カ月後までにLVEFが40%以上に回復した月齢 1 カ月の症例の 2 例で,その他の症例は治療による反応は鈍く心移植適応例となり移植待機中に 2 例は死亡,1 例は現在渡米準備中である.発症時の心電図では全例deep Qや左側胸部誘導のST-T変化を認めたが,心移植適応となった例ではQRS時間がより延長する傾向を認めた.【結語】乳児期発症のDCMはいまだ予後不良の疾患であるが,治療早期に心機能の回復を認める症例もあった.初診時の心電図においてQRS時間の延長の有無が予後判定の指標となる可能性が推察された.

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