II-E-5
基礎疾患がなく,冠動脈攣縮性心筋梗塞と診断された12歳男児の 1 例
済生会宇都宮病院小児科
高橋 努,井原正博

【はじめに】基礎疾患がない若年者の心筋梗塞はまれである.左胸痛で受診し,冠動脈攣縮性心筋梗塞と診断された 1 例を経験したので報告する.【症例】12歳男児.朝から左胸部痛が持続し,苦悶様となり近医受診した.心電図上ST上昇を認め,紹介受診した.既往歴に冠危険因子や川崎病の罹患歴なし.外来で行った心電図ではV2,3,4 でST上昇を認め,採血でWBC 10,270,GOT 124,LDH 422,CK 1,585(CK-MB 100.3),心筋トロポニンT(+),H-FABP(+)より,急性心筋梗塞を疑った.心エコーで左前下行枝#7 領域に心室壁運動の低下を認め,緊急心臓カテーテル検査を施行した.冠動脈の左前下行枝に攣縮によると思われる狭窄を認めた.硝酸イソソルビドを左冠動脈に注入したところ,攣縮は消失し心電図上の改善を認めた.その後,ヘパリン,硝酸イソソルビド,ニコランジルの持続点滴,アムロジピン,アスピリンの内服を開始した.翌日からリハビリを開始し,症状の再燃なく,第 9 病日に退院した.退院後も経過良好である.【考察】若年者の心筋梗塞の報告例はあるが,基礎疾患がなく冠動脈攣縮によるものはまれである.しかし,冠攣縮性狭心症は日本人に多く,不安定狭心症や急性心筋梗塞の原因となり得る重要な疾患であるため,若年者においても胸痛で受診した際には本疾患も考慮する必要がある.

閉じる