II-P-1
左心低形成症候群に対する第一期両側肺動脈絞扼術の遠隔成績
三重大学大学院医学系研究科胸部心臓血管外科1),三重大学大学院医学系研究科小児科2)
高林 新1),横山和人1),梶本政樹1),新保秀人1),大橋啓之2),澤田博文2),早川豪俊2),三谷義英2)

【目的】左心低形成症候群(HLHS)の治療戦略では第一期Norwood手術が主流だが,第一期に両側肺動脈絞扼術を行い,第二期手術までPGE1または主肺動脈-下行大動脈シャント術(MPA-desc. Ao. shunt)で体血流を維持する当科の戦略の成績を報告する.【対象と方法】2002年以降の第一期両側肺動脈絞扼術を行ったHLHS 7 例(AA/MA:4,AS/MS:3)を対象とした.2 例が染色体異常を,1 例が心房中隔欠損(ASD)閉鎖と左房-無名静脈交通を伴っていた.本戦略の妥当性につき検討した.【結果】一期術前にBASを 4 例に施行した.両側肺動脈絞扼術は 7~19生日,2.6~3.5kgに片側周径10~14mmで行い,全例で胸骨閉鎖が可能であった.初期の 2 例(周径14mm)は術後心不全のため長期人工呼吸管理を要したが,周径10~11mmとした後期 5 例中,出生時ASD閉鎖例を除く 4 例で術後 2 日以内に呼吸器離脱可能であった.後期 5 例で一期術後にエピネフリン投与を要した症例はなく,ICU帰室時ドーパミン投与量は 3~5cで投与期間は 2~6 日であった.体血流維持法はPGE1:5,MPA-desc. Ao. shunt:2 例で,動脈管の膜状内膜肥厚が進行した 1 例に対しMPA-desc. Ao. shuntの追加を行った.二期術前にBASを 4 例に対し施行し,ASD拡大/作成術をおのおの 1 例に対し行った.7 例全例に対し第二期手術(両方向性グレン手術 + 大動脈弓再建 + 冠血流再建)を 3~9 カ月,2.9~4.7kgで施行し,全例で胸骨閉鎖が可能であった.二期術後に肺高血圧発作で,一期術後長期N2 投与例:1 と染色体異常を伴う出生時ASD閉鎖例:1 例が死亡した.染色体異常合併例 1 例を含む他の 5 例は全例生存しており,2 例がFontan術後,3 例がFontan手術待機中である.染色体異常のない 4 例全例に脳障害,発達遅延は認めていない.【結語】本戦略にて染色体異常を伴うHLHSを 1 例救命し得た.第一期手術時の侵襲が少ない本戦略は,術後発達の面で第一期Norwood手術よりも有利となる可能性が示唆された.

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