II-P-3
左室低形成を伴う症例の肺動脈絞扼術後の左室容積の推移
神奈川県立こども医療センター循環器科
上田秀明,中本祐樹,柳 貞光,林 憲一,康井制洋

【背景】unbalanced ventricleを有する完全心内膜床欠損(ECD)など,最初のpalliationとして肺動脈絞扼術の選択を余儀なくされる症例がみられる.術後,十分な左室容積が得られず,術式の選択や術後管理に難渋することが多い.左室容積の推移に関する報告は散見されるものの,いまだ少ない.本研究は,左室低形成を伴う症例の肺動脈絞扼術後の左室容積の推移や予後を後方視的に検討した.【目的】左室低形成を伴う症例の肺動脈絞扼術後の左室容積の推移や予後を明らかにすること.【対象と方法】対象は,機能的単心室を除く肺動脈扼術を行った43症例のうち,左室低形成と診断された 6 例.ECD 5 例,ECD,大動脈縮窄合併例 1 例.肺動脈絞扼施行時期,左室造影から算出した左室容積LVEDV % normal,肺体血流比Qp/Qs,肺血管抵抗Rpの諸項目の検討を行った.【結果】6 例中 5 例は,21トリソミー.生存例は 2 例,3 例周術期死亡 1 例.生存例のうち 1 例,フォンタン術待機中,1 例はフォンタン術適応外.肺動脈絞扼術は日齢 8~219(中央値58日)に施行され,術後45~740日(中央値375日)に左室造影を行った.術前の左室容積,Qp/Qs,Rpはそれぞれ56.5 ± 20%N,4.96 ± 2.96,2.36 ± 2.17U・m2で,術後の左室容積,Qp/Qs,Rpはそれぞれ69.9 ± 34%N,1.04 ± 0.29,2.59 ± 0.87U・m2であった.術後に左室の発育が十分に得られたのは,2 例のみで,1 例は根治術の周術期に失った.【結語】左室低形成を伴う症例では,肺動脈絞扼術後に十分な左室容積を得られることは難しい.21トリソミー合併例が多く,肺血管抵抗も比較的高いことから,フォンタン術ハイリスク群に属し,いまだ満足すべき長期予後は得られていない.

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