II-P-5
乳児期BTシャント術の成績について
弘前大学医学部第一外科1),弘前大学医学部小児科2),東京都立八王子小児病院心臓血管外科3)
鈴木保之1),大徳和之1),福井康三1),福田幾夫1),江渡修司2),大谷勝記2),佐藤 工2),高橋 徹2),米坂 勧2),厚美直孝3)

姑息術としてブラロック = タウシッヒ(BT)シャント術はスタンダードな術式であるが,重要な手術でもある.今回,BTシャント術を後方視的に検討したので報告する.【対象と方法】1998年以降,乳児期に初回姑息術として行ったBTシャント術19例を対象とした.手術時年齢は87日 ± 68,体重:4.2 ± 1.2kg,術前のリプル投与は15例であった.診断は,ファロー四徴症 3,純型肺動脈閉鎖 2,両大血管右室起始症 1,三尖弁閉鎖症(IIa)1,機能的単心室12例で,シャントは左側 9,右側10,使用したグラフトは 4mm:15本,3.5mm:3,5mm:1 であった.これらの症例について,シャント術後のPAIの変化,シャント吻合部の肺動脈の変形・狭窄の有無,その後の経過について検討した.【結果】術前のPAIは191 ± 84で,術後平均 8 カ月後評価でPAIは324 ± 130と増加していた(p < 0.05).シャント吻合部肺動脈に狭窄,引きつれなどは認めなかったが,動脈管収縮に伴って生じた肺動脈縮窄(PA CoA)を 3 例に,シャント吻合部の末梢肺動脈狭窄を 1 例に認めた.術後早期シャント閉塞の 1 例は,残存動脈管組織にグラフトが押され閉塞し,初回手術後 2 週目に再手術を行った.3.5mmのグラフトを使用した 1 例で早期にグラフト内腔が狭小化し,4 カ月後に再シャント術を行った.PA CoAを認めた 3 例のうち 2 例はグレン手術の際,肺動脈の形成を行い狭窄は解除され,1 例は対側のシャント術を追加した.吻合部の遠位側に狭窄を認めた症例はバルーン形成術を行った.術後遠隔期はFontan手術を行った症例が 2 例,Fontan待機例が 6 例,両心室修復終了例が 3 例,待機例 2 例,経過観察中 2,その他 4 例が他院転院あるいは経過観察中に失った.【結語】乳児期に初回手術として行われたBTシャント術の成績は良好であった.肺動脈縮窄を伴った症例での肺動脈の形成時期についてはさらなる検討が必要である.また,3.5mmのグラフトは早期に狭小化することがあり注意が必要であると考えられた.

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