II-P-7
拡大大動脈弓再建術後狭窄例における形態的評価
兵庫県立こども病院心臓胸部外科1),兵庫県立こども病院循環器科2)
松久弘典1),大嶋義博1),吉田昌弘1),高野信二1),島津親志1),日隈智憲1),高橋宏明1),鄭 輝男2),城戸佐知子2),佃 和弥2),藤田秀樹2)

【対象と方法】1989~2005年に当科にて拡大大動脈弓再建術(EAA)が行われ,術後追跡調査が可能であった77例を対象とした.疾患はsimple CoA 13例,CoA complex 44例,IAA complex 20例.初回手術時日齢は中央値で21日,体重は中央値で3.3kgであった.このうち19例は正中アプローチにて一期的心内修復術が施行された.また 5 例は左開胸左心バイパス補助下に手術が施行された.術後追跡期間は平均75.5 ± 54.4カ月.上下肢血圧差か,心エコーによる圧差が20mmHg以上の症例には,血管造影,MRIを施行し,狭窄部径が下行大動脈径の0.6以下を形態的再狭窄とした.【結果】上下肢圧差20mmHg以上の症例は14例で,エコーでの圧較差20mmHg以上の症例は32例であった.血管造影が20例に,MRIが 2 例に行われ,9 例(12%)に形態的な再狭窄がみられた.再狭窄症例は全例側開胸例であった.再狭窄の形態により 3 群に分けた.A群:左鎖骨下動脈遠位部で術後早期より進行性の狭窄がみられた 2 例.B群:吻合部より中枢側に狭窄がみられた 4 例で,狭窄部位は近位弓部が 1 例,遠位弓部が 3 例であった.C群:術後遠隔期に全周性吻合部狭窄が認められた 3 例.再狭窄に対し,バルーン拡大がA群 2 例(2 カ月後,6 カ月後),B群 1 例(11年後),C群 3 例(3 年後,5 年後,10年後)に行われた.再手術はB群の 1 例(術 2 年目に左心バイパス下にEAA)と,C群の 1 例(術10年目のバルーン拡大が無効で,左心バイパス下に鎖骨下動脈フラップ法)に行われた.【考察および結論】A群の原因としては,動脈管組織の遺残が考えられた.B群においては,大動脈遮断部位の問題で,側開胸アプローチでは限界がある.これに対し,正中アプローチが有用であろうが,フォンタン適応例のように肺動脈絞扼術が必要な症例では課題が残る.再狭窄例に対するバルーン拡大はA群,C群に対してはおおむね有効であった.

閉じる