II-P-8
Extended aortic arch anastomosis―左鎖骨下動脈によるarch augmentationの有用性―
筑波大学臨床医学系心臓血管外科1),筑波大学臨床医学系小児科2)
杉森治彦1),平松祐司1),野間美緒1),加藤秀之1),佐藤真剛1),高橋実穂2),堀米仁志2),榊原 謙1)

【はじめに】大動脈縮窄・離断症には種々の再建術式があるが,吻合部狭窄が問題となることがある.最近経験した左開胸による大動脈弓再建術式を示し,extended aortic arch anastomosis(以下EAAA)を左鎖骨下動脈によってaugmentationするわれわれの応用術式の有用性について述べる.【対象】2005年にEAAAを行ったarch hypoplasia 2 例とIAA type A 1 例.〈症例 1〉日齢24,IAA type A,VSD.aortic rootが狭小で一期根治に不安があり,第一期手術としてEAAAとPABを行った.BCA,LCCA 間で遮断し下行大動脈をarch下面に吻合,下行大動脈の大彎側をcut backしてここに左鎖骨下動脈をあて,arch augmentationを行った.〈症例 2〉日齢13,三尖弁閉鎖症,arch hypoplasia.EAAAとPABを行った.〈症例 3〉日齢 4,SV,arch hypoplasia.EAAAに左鎖骨下動脈によるarch augmentationを加え,PABを行った.【結果】3 例とも第一期手術後は順調で,その後症例 1 は根治を,症例 3 は第二期DKS手術を終えた.3 例とも大動脈造影で狭窄所見を認めず,超音波による再建部位の流速評価はそれぞれ,1.7m/s(10.9mmHg),1.0m/s(3.6mmHg),1.3m/s(6.9mmHg)と良好であった.【まとめ】EAAAは十二分な剥離と的確な遮断,吻合操作を要するが,IAA type Aを含むarch hypoplasiaに対して有効であった.EAAAを左鎖骨下動脈によってaugmentationすることで,吻合部張力をより長く傾斜した縫合線に分散でき,archの拡大および吻合部狭窄の防止に有効であると思われた.

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