II-P-9
選択的脳灌流法における脳組織代謝モニタリング
長野県立こども病院心臓血管外科1),長野県立こども病院循環器科2),長野県立こども病院臨床工学科3)
内藤祐次1),原田順和1),打田俊司1),岡本祐樹1),阿知和郁也1),里見元義2),安河内聰2),松井彦郎2),長谷山圭司2),金子幸栄2),金子 克3)

【目的】選択的脳灌流時における左右の脳組織代謝を観察し,術後神経学的合併症の有無を検証すること.【対象と方法】選択的脳灌流施行下に大動脈弓再建を行った 2 症例において,2-channelの測定が可能な近赤外線分光法(NIRS)を用いて左右の脳組織代謝を観察した.対象疾患は,両側肺動脈絞扼術後の左心低形成症候群(HLHS)2 例で,それぞれ手術時平均日齢:97,129日,体重:4.9,5.1kgであった.体外循環は腕頭動脈へ端側吻合した人工血管および下行大動脈へ送血ルートを確保して上下肢分離体外循環を行い,total flowは150ml/kg/min,選択的脳灌流量は右上肢動脈圧をモニターしながら10~30ml/kg/minを目標とした.近赤外線分光器(浜松ホトニクス社製NIRO-200)を用い,20秒間隔でモニタリングし,組織酸素化の指標としてTOI(tissue oxygenation index),脳血流量の指標としてHbD(酸素化Hb変化量 - 脱酸素化Hb変化量)を算出した.体外循環の因子としてHct値,咽頭温を測定した.【結果】A.体外循環前,B.体外循環開始直後,C.分離体外循環時,D.選択的脳灌流時,E.選択的脳灌流終了後の各測定値の平均(右:左)は以下の通りであった.〈TOI〉A.50.5:46.7,B.49.0:44.3,C.69.5:60.6,D.67.2:64.5,E.57.5:54.2,〈HbD〉A.-10.7:-9.6,B.-16.8:-18.0,C.20.5:16.0,D.34.8:26.4,E.13.8:9.9,〈Hct値〉A.45.0,B.32.0,C.33.6,D.35.0,E.41.9,〈咽頭温〉A.36.2,B.32.1,C.25.2,D.25.2,E.34.1.1 例に術後硬膜下水腫を認めたが,体外循環との因果関係は不明であった.【結語】今回の検討では,左側の潜在的な低灌流が示唆されたが,酸素化としては十分であると考えられた.

閉じる