II-P-10
乳児期発症の重症右心機能不全を呈するUhl病の長期生存例―手術術式を中心に―
山梨大学医学部第二外科1),山梨大学医学部小児科2)
滝澤恒基1),鈴木章司1),井上秀範1),加賀重亜喜1),榊原賢士1),本橋慎也1),本田義博1),三森義崇1),木村光裕1),杉山 央2),松本雅彦1)

【背景】Uhl病は右室自由壁の心筋欠如を特徴とし,ほかに心内奇形を合併せず,ARVD(arrhythmogenic right ventricular dysplasia)の類縁疾患ないし再重症型といわれる極めてまれな疾患である.一般に乳児期発症例は,ほぼ全例幼児期に死亡すると考えられており,確立された手術術式はない.今回われわれは長期生存例を経験したので手術術式について考察を加えて報告する.【症例】2 カ月時に多呼吸にて発症しUhl病と診断.内科治療にて一時軽快したが,8 カ月時に心不全が増悪した.〈初回手術〉9 カ月,7.6kg時に準緊急でpartial right ventriculectomyを併用したone and a half ventricle repairを施行.術直後一過性に肝腫大傾向を認めたが,不整脈の合併なくSpO2は94~98%に上昇した.また右室のvolume reductionを達成し,左室の拡張運動に付随した右室の収縮を認め,右室駆出率も術前25%から33%に上昇した.しかし徐々に右心系再拡大とTRの進行を認め,著明な肝腫大を呈した.〈2 回目手術〉6 歳,20kg時にRV exclusion(RV free wall resection + patch closure of the tricuspid valve)を併用したfenestrated TCPCを施行.術前PAI = 177,RA圧 = 16mmHgであったが,術後PA圧 = 10~11mmHg,RA圧 = 5~6mmHgに改善した.心エコーでも拡大した右室による左室圧排は解除された.術後 5 時間に抜管し経過良好である.【結語】極めてまれで遠隔予後不良な乳児期発症のUhl病に対し,2 回の開心術を施行し長期生存を得た.本症では右心機能は期待できず,RV exclusion + TCPCは有望な選択肢と考えられた.

閉じる