II-P-11
右上大静脈欠損・左上大静脈左房還流および三心房心を合併した不完全型房室中隔欠損症の 1 手術例
新潟大学医歯学総合病院第二外科1),新潟大学医歯学総合病院小児科2)
白石修一1),渡辺 弘1),高橋 昌1),鈴木 博2),長谷川聡2),朴 直樹2),沼野藤人2),林 純一1)

症例は 4 歳女児.生後より発育・成長に異常を指摘されたことはなし.4 歳児検診にて初めて心雑音および心拡大を指摘され,精査加療目的に当院小児科紹介受診した.心臓エコー検査にて不完全型房室中隔欠損症・僧帽弁閉鎖不全・右上大静脈欠損・左上大静脈左房還流(unroofed coronary sinus)と診断された.心臓カテーテル検査において肺体血流比4.69,肺動脈圧26/10(17)mmHg,動脈血酸素飽和度92.6%,右室拡張末期容積260%N,左室拡張末期容積111%Nであり,心内修復術の適応と判断され当科転科となった.手術は上行大動脈送血,左上大静脈および下大静脈脱血にて体外循環を確立し,心停止下に経右房切開にてcleft sutureおよび自己心膜を用いた心房内分割術を行った.また,術中所見にて三心房心を認め,同時に隔壁切除を施行した.体外循環離脱直後に上下大静脈間に10mmHgの圧較差を生じ,経食道心エコーにて上大静脈血流路内に狭窄部を認めたため,再度心停止下に心房内左上大静脈血流路の再建を行いその後は圧較差は消失し体外循環からの離脱は容易であった.経食道心エコーにて心房内血流路の狭窄および遺残短絡のないことを確認し手術を終了した.術後に上半身の浮腫やチアノーゼの出現は認めず良好な経過を得た.房室中隔欠損・右上大静脈欠損・左上大静脈左房還流および三心房心の合併は比較的まれであるため,文献的考察を加え報告する.

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