II-P-12
肺静脈形態により特異な血行動態を呈した下心臓型総肺静脈還流異常を有する内臓錯位症候群の 1 例
聖隷浜松病院小児循環器科1),聖隷浜松病院心臓血管外科2)
武田 紹1),中嶌八隅1),長崎理香1),小出昌秋2),山崎 暁2),渡邊一正2),松尾辰朗2),杉浦唯久2)

【はじめに】内臓錯位症候群は高率に総肺静脈還流異常・肺静脈狭窄を来す.近年,helical CTにより詳細な形態診断,病態診断が可能となってきている.われわれは特異な肺静脈形態に起因すると思われる肺静脈狭窄の 1 例を経験したので文献的考察を加え報告した.【症例】在胎39W 4D,2,476gで出生,日齢 9 に多呼吸で紹介された.dextrocardia, {A (S). X. D.}, CA, SRV, CAVV, mild PS, RAA, PDA, TAPVC (infracardiac type), PVO, bilateral SVCと診断されTAPVC repair & PAB施行された.心外奇形として食道裂肛ヘルニアを認めた.7 カ月時の心臓カテーテル検査で,PAP 22mmHg,Qp 3.4,Qs 3.5,Rp 3.6,RVGでは左肺動脈しか造影されず,右鎖骨下動脈造影で側副路より右肺動脈上葉枝を介して肺動脈が造影され,遅延相において肺静脈の異常走行を認めた.造影CTでは脊柱の右に下行大動脈,下大静脈,心房と心尖部があり左の肺静脈は脊柱を乗り越えcommon chamberを形成していた.右上肺静脈は細く脊柱を乗り越え左上肺静脈に還流していた.【考察】以前稲村らは心房還流型肺静脈の無脾症候群において偏位型は肺静脈が心尖部,下大静脈の対側に還流し心尖部側の肺静脈が脊柱を乗り越えて心房に還流する形態が多いと記載している.疾患群が異なるが本症例では左上と左下の肺静脈がほぼ脊柱の正面で合流しており右偏位型と考えられたが心尖部,下大静脈も右に位置していた.このことは総肺静脈還流異常の成因を考えるうえで興味深い.そして右上肺静脈は明らかに走行異常と考えられた.また側副路を形成していることから肺静脈狭窄と考えられ,それに伴う血流の低下により側副路が発達し本症例のような血行動態が完成したと考えられた.【まとめ】肺静脈形態により特異な循環動態を呈した内臓錯位症候群を経験した.肺静脈形態や周辺臓器との関係の把握に造影CTは有用であった.

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