II-P-13
TAPVC(Ia)を合併した単心室症の 3 例
三重大学大学院医学系研究科胸部心臓血管外科1),三重大学大学院医学系研究科小児科2)
梶本政樹1),高林 新1),横山和人1),新保秀人1),大橋啓之2),澤田博文2),早川豪俊2),三谷義英2)

心外への総肺静脈還流異常症(TAPVC)を合併した単心室症の手術成績,特に早期の成績はいまだ不良である.今回,TAPVC(Ia)を合併した単心室症の 3 例を最近経験したので,本疾患群の治療方針を含め報告する.【症例 1】診断:無脾症候群,右室型単心室,肺動脈閉鎖,TAPVC(Ia),左肺動脈縮窄,右側大動脈弓.1 カ月時3.2kgで,低充填体外循環回路を用いて,modified BT(ePTFE 4mm)+ 肺動脈形成 + 動脈管切離術を施行した.肺静脈狭窄の進行を認めず,5 カ月時4.6kgで両方向性Glenn手術(BDG)+ TAPVC修復術を施行した.2 歳 9 カ月時11.3kgでFontan手術(EC:ePTFE 18mm)を施行し経過良好である.【症例 2】診断:無脾症候群,右室型単心室,肺動脈狭窄,TAPVC(Ia),共通房室弁口.1 カ月時2.5kgでmodified BT(ePTFE 3.5mm)を施行.肺静脈狭窄の進行を認めず,1 歳 4 カ月時7.3kgでBDG手術 + TAPVC修復術を施行した.経過良好で現在Fontan手術待機中である.【症例 3】診断:単心室,単心房,TAPVC(Ia),右側大動脈弓,右胸心.生後 5 日時2.6kgにて肺動脈絞扼術を施行,1 カ月時3.0kgで肺静脈狭窄の進行に対しTAPVC修復術を施行した.現在BDG手術待機中である.3 例とも経過は良好で大きな合併症は認めていない.肺静脈狭窄の進行がない限り,体外循環による侵襲が大きい新生児,乳児期早期のTAPVC修復術を可及的に回避する当科の戦略は妥当と考えられた.

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