II-P-14
総肺静脈還流異常症(TAPVD)術後の長期予後に関する検討
九州厚生年金病院心臓血管外科1),九州厚生年金病院小児科2)
落合由恵1),井本 浩1),坂本真人1),梶原敬義1),神尾明君1),瀬瀬 顯1),弓削哲二2),渡辺まみ江2),城尾邦隆2)

【目的】総肺静脈還流異常症(TAPVD)の手術成績は安定してきたが,術後の肺静脈狭窄(PVO)はいまだに重篤な合併症である.今回TAPVC手術例の術後遠隔成績について,特に術後PVO発生例を検討し,長期予後を検討した.【対象】1986~2005年に当施設で手術したTAPVCは69例(heterotaxyは除く)で,男/女43/26例で,初回手術時日齢39.5 ± 55.6,初回手術時体重3.3 ± 1.0kgであった.TAPVCの分類はDarling分類Ia型26例,Ib型 9 例,IIa型 5 例,IIb型 5 例,III型19例と混合型が 5 例であった.合併奇形は 8 例で,coactation + VSD 1 例,Ebstein奇形 1 例,TOF 2 例,valvular PS 2 例,VSD 2 例であった.69例中手術死亡は 4 例(5.8%)であった.術後,ほぼ前例に心臓カテーテル検査を施行し,また心エコー上肺静脈最大流速が1.8m/sec以上で右室圧の上昇を認めたものをPVOとした.術後平均観察期間は,3 カ月~19.5年(平均8.0 ± 6.0年)であった.【結果】生存した65例中 8 例(12.3%)に術後PVOを合併した.8 例全例で,初回手術後 3 カ月以内にPVOの発生を診断した.PVO発生とDarling分類の関係では,I型で 4/35,II型で 2/20,III型で 1/19と混合型が 1/5 とIII型で少ない傾向があった.8 例中,(1)内科治療単独;2 例で 1 例が遠隔死亡.(2)外科治療;6 例,うち 3 例はPVO解除術後に遠隔死亡,残り 3 例は計 5 回のPVO解除を施行し,生存中である.1 例(III型)では,術後PVOの形態診断に 3D-CTが有効で,隔壁切除を行い,PV orificeを拡大した.PVOの発生が現在のところ認めていない57例では,1 例(術後 4 カ月後にnon-cardiac突然死)以外で,重篤な不整脈の発生もなく,経過良好であった.【結語】TAPVD術後のPVOはほとんど術後早期,3 カ月以内に形成され,PVO解除の成績もまだ満足すべきものではなかった.PVOのない症例では,遠隔予後は良好であった.

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