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気管支狭窄を合併した先天性心疾患に対し,心膜吊り上げ固定術が有効であった 2 治験例
大阪市立総合医療センター小児心臓血管外科1),大阪市立総合医療センター小児循環器内科2)
上野高義1),西垣恭一1),川平洋一1),瀬尾浩之1),村上洋介2),杉本久和2),江原英治2),川崎有希2)

先天性心疾患にCOPDを合併すると,肺気腫が進行し治療に難渋することがある.片側肺過膨張を来すと,縦隔偏位により対側の無気肺や気道狭窄を起こし,呼吸障害が増悪する.今回,右肺気腫,左無気肺により,縦隔が左方偏位し左主気管支狭窄を来した症例を 2 例経験し,右肺過膨張を抑制し縦隔偏位を補正する目的で,心膜吊り上げ固定術が有効であったので報告する.【症例 1】PAPVD,VSD,ASD,右側大動脈弓,血管輪の 5 カ月女児.3 カ月時にCOPDの急性増悪で挿管,改善後心内修復術を施行.術後,右肺過膨張,左無気肺を来し人工呼吸離脱できず,胸部CT上,心臓の偏位回転による左主気管支圧迫を認めた.そこで,気管支ファイバー下に,再胸骨正中切開にて,過膨張した右肺を押し込むように右側心膜を右胸骨に逢着し心臓の偏位を補正,大動脈および肺動脈の吊り上げを加え左主気管支圧迫を解除した.術前,1 回換気量が60%増加,Xp上,縦隔偏位および左肺無気肺の改善,含気の増加を認めた.術後経過は順調で,人工呼吸を離脱できた.【症例 2】PDA,VSD(small),PH,ダウン症候群,の 4 歳男児.COPDに加え気管支炎を併発し挿管となった.PCO2は70mmHgと貯留し,Xp上右肺過膨張による著明な縦隔左方偏位,CT上,右肺動脈と下行大動脈に挟まれ左主気管支狭窄を認めた.よって,胸骨正中切開にてアプローチ,心膜を正中で切開し,気管支ファイバー下に,右側心膜を胸骨右縁に,左側心膜を胸骨左縁に吊り上げ固定し,右肺過膨張の抑制および左肺の拡張を行い,肺動脈および大動脈吊り上げを加えた.術後,縦隔偏位および左無気肺は改善し,翌日PCO2は50mmHgとなり,人工呼吸を離脱可能であった.【まとめ】肺気腫により右肺過膨張を来し,左主気管支狭窄を認めた先天性心疾患に対し心膜吊り上げ固定術を行った.大動脈および肺動脈吊り上げと併用することで左気管支狭窄は解除され,有用な方法であると考えられた.

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