II-P-19
大動脈弁上狭窄の手術成績の検討
兵庫県立尼崎病院心臓センター心臓血管外科1),兵庫県立尼崎病院心臓センター小児循環器科2)
大谷成裕1),藤原慶一1),大野暢久1),森島 学1),西村 崇1),藤原靖恵1),坂崎尚徳2),若原良平2),李 進剛2)

【背景】大動脈弁上狭窄はまれな疾患であるが,その術式は時代とともに変遷がみられる.今回われわれは当院における大動脈弁上狭窄症例について術式と早期ならびに長期遠隔成績を検討したので報告する.【対象】当院で手術を施行した大動脈弁上狭窄は 5 例で,初回手術時年齢は 9 カ月~23歳(中央値 5 歳 7 カ月)であった.形態は全例が砂時計型であった.3 例が大動脈弁性狭窄を合併し,Williams症候群は 2 例であった.【結果】手術術式は年代順にNCCへのパッチ拡大術;3 例,Doty法;1 例,Myers法;1 例であった.パッチ拡大術のうち23歳最年長例には大動脈弁性狭窄を伴っていたので同時に大動脈弁置換術を行った.手術死亡はなかった.左室大動脈収縮期圧較差は,術前58~144mmHg(平均96.3 ± 35.3mmHg)から術早期 3~32mmHg(平均17.8 ± 11.8mmHg)に有意に低下した.follow-up期間 7 カ月~18.7年(平均12.0 ± 15.9年)で,遠隔期死亡はなく,再手術症例は大動脈弁性狭窄合併の 1 例であった.再手術症例は左室大動脈収縮期圧較差が32mmHgから,術後13年に圧較差が73mmHgと大動脈弁性狭窄が進行し,またパッチ拡大部の動脈瘤を認めたため,弁置換とパッチ交換を施行した.現在,全例が問題なく経過している.【結論】当院における大動脈弁上狭窄に対する手術成績は,パッチ拡大術,Doty法,Myers法とも術後早期においては良好であった.遠隔期においては,パッチ拡大術症例において同部に動脈瘤の形成を認め,再手術を必要としたが,Doty法症例に再手術例はなかった.Myers法はfollow-up期間が短く今後さらなる経過観察が必要と思われる.

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