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乳児期に急性発症した重症大動脈弁閉鎖不全に対しRoss手術を施行し救命し得た 2 例
榊原記念病院循環器小児科1),榊原記念病院心臓血管外科2)
末永智浩1),佐藤裕幸1),朴 仁三1),畠井芳穂1),村上保夫1),森 克彦1),高橋幸宏2),安藤 誠2),和田直樹2)

大動脈弁疾患に対する自己肺動脈弁移植(Ross手術)は乳児期までその適応が拡大されつつあるが,多くは大動脈狭窄症のカテーテル治療後に生じた大動脈弁閉鎖不全(以下AR)に対して行われることが多く,急性に発症したARに対する同手術の報告は少ない.当院では乳児期に急性発症した重症ARに対しRoss手術を施行し,救命し得た 2 症例を経験したので報告する.【症例 1】5 カ月男児,入院時体重7.2kg.発症 1 カ月前に尿路感染症の既往あり.哺乳不良・顔色不良で発症.ショック状態となり,心エコーでAR・左冠尖基部のvegetation認め,前医で集中治療を受けた.13病日に当院転院,14病日,Ross手術施行.大動脈弁は 3 弁で,病理検査で好中球の浸潤を認めた.経過良好で,37病日に前医へ転院.【症例 2】6 カ月男児,入院時体重7.1kg.多呼吸・顔色不良にて発症.前医にてARによる心不全と診断.3 病日に当院転院,心エコーで左冠尖の逸脱を認めた.8 病日,Ross手術施行.大動脈弁は 3 弁で,病理検査で炎症所見はみられず.経過良好で,24病日に退院.【考察】2 症例とも内科的治療には限界があり,体格的にも人工弁置換は困難で,Ross手術以外に救命手段はないと判断.準緊急的に施行したが経過は順調で無事退院を迎えることができた.乳児期の重症大動脈弁疾患に対する治療としては,先天性・後天性を問わずRoss手術が第 1 選択となると思われる.

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