II-P-22
僧帽弁,大動脈弁に粘液腫様変化を来した左室二腔症の 1 例
大垣市民病院胸部外科
六鹿雅登,玉木修治,横山幸房,石川 寛,石本直良

【はじめに】右室二腔症に比べ左室二腔症は非常にまれな疾患である.粘液腫様変化を来した症例はさらにまれであり病態も明らかでない.今回当院で左室流出路狭窄および僧帽弁閉鎖不全症を伴い,術中所見で粘液腫様変化を僧帽弁,大動脈弁に来した左室二腔症を経験したので報告する.【症例】14歳,女児.患児は,出生後心筋症を疑われていた.9 歳時に肥大型心筋症を疑われ,βブロッカーの内服を開始した.13歳時,無症状ではあったが,再度心臓カテーテル検査を施行し,左室二腔症と診断された.左室内の圧較差は約50mmHgであった.14歳時より労作時胸痛を訴え,手術適応につき当院に紹介となった.精査の結果,形態学的には,僧帽弁前尖乳頭筋レベルで左室のapex chamberとoutflow chamberが湾曲しており,またその部位に狭窄部位を認めた.outflow chamberは全く収縮に関与していなかった.若年であり,すぐに手術を行わず内科的治療を優先させたが,大動脈弁に腫瘤を形成し,その拡大が疑われ,手術の方針とした.【手術所見】大動脈弁に径 8mmほどのjelly状の粘液腫様の腫瘤を認めた.僧帽弁は未発達であり,乳頭筋も肥厚短縮し,その間に大動脈弁と同様な粘液腫様変化を多数認めた.弁温存は困難と判断し,二弁置換術を選択した.【考察】本症例は文献検索の結果,今までに報告されていないタイプであり,発生学的には弁形成時の異常と考えられる.粘液腫様変化の発生要因は不明であるが,僧帽弁下のものが大動脈弁に飛散したものと考えられた.二弁置換術を選択し左室流出路狭窄も解除され,良好な経過である.

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