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重症房室弁逆流に対し乳児期に人工弁置換を施行した 2 例
和歌山県立医科大学小児科1),和歌山県立医科大学第一外科2),紀南病院小児科3)
武内 崇1),渋田昌一1),鈴木啓之1),吉川徳茂1),小森 茂2),平松健司2),岡村吉隆2),南 孝臣3)

重症房室弁閉鎖不全に対する外科的治療として房室弁形成術と人工弁置換術があるが,乳児期の心不全を伴った症例について,その時期と方法の決定は難しい.重症房室弁逆流により心不全を呈した乳児 2 例に人工弁置換術を行ったので,それらの手術前後の経過を報告する.【症例 1】先天性孤立性僧帽弁閉鎖不全の女児.生後 4 カ月に心雑音で発見され心エコーにて僧帽弁閉鎖不全(MR)と診断し入院.MRはmassiveで,利尿剤と血管拡張剤の内服を開始したが改善せず,胸部X線でCTRの増加(65%),肺高血圧の進行(心エコー評価),hANP・BNPの増加(1,120・1,250)を認めたため,手術適応と判断し僧帽弁置換術(SJM 19MHP)を施行した.僧帽弁はdysplasticであり,後尖腱索の短縮,前尖腱索の延長,前尖の逸脱も認めた.術後32日目に退院,術後 2 カ月時でhANP 96.6,BNP 37.5と低下,CTRも53%に減少し体重増加も良好である.【症例 2】{S,L,L}修正大血管転位,Ebstein奇形,三尖弁閉鎖不全,心室中隔欠損(小欠損),心房中隔欠損(小欠損),動脈管開存(小短絡),肺動脈弁狭窄(軽症),WPW症候群の女児.生後13日に心雑音で発見され,心不全治療のため入院.三尖弁閉鎖不全はmassiveで,利尿剤と血管拡張剤の内服を開始したが体重増加は得られず,生後48日目から強心剤の持続点滴が必要となり,CTRの増加(66%)と著明な肺うっ血,hANP・BNPの増加(2,000以上・1,900)を認めた.生後51日目上室性頻拍を生じDCで停止.生後54日目に緊急で三尖弁置換術(SJM 17MHP)を行った.三尖弁は弁自体が非常に薄く,中隔尖にplasteringを認めた.人工心肺からの離脱は容易でICUに帰室できた.術後 2 日目,突然血圧が低下,徐脈となり補助循環を開始したが,術後 3 日目に死亡した.【結語】乳児の房室弁閉鎖不全の手術時期決定に心エコーでの肺高血圧の出現,血液検査でのhANP・BNPの増加,上室性頻拍の出現が参考となった.

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