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自己心膜を用いた僧帽弁形成術の検討
兵庫県立こども病院心臓胸部外科1),兵庫県立こども病院循環器科2)
島津親志1),大嶋義博1),吉田昌弘1),高野信二1),松久弘典1),日隈智憲1),高橋宏明1),鄭 輝男2),城戸佐知子2),佃 和弥2),藤田秀樹2)

【目的】小児における僧帽弁疾患に対する外科治療に際しては,人工弁置換術を回避するために,形成術を第 1 選択とする場合が多い.今回,われわれは自己心膜を用いた僧帽弁形成術を行った.【方法】2004年 4 月~2005年12月の期間に,5 例に自己心膜を用いた僧帽弁形成術を行った.原因疾患は僧帽弁位の活動期感染性心内膜炎 2 例,川崎病後に生じた僧帽弁逆流(MR)が 1 例,先天性MRが 1 例,原因不明の腱索断裂による急性MRが 1 例であった.合併疾患は感染性心内膜炎症例でVSD,川崎病症例は冠動脈瘤を合併していた.術前MRはmildが 1 例,moderateが 2 例,severeが 2 例であった.手術時年齢は 3 カ月~14歳 1 カ月(中央値 2 歳 2 カ月)であった.手術術式は感染性心内膜炎症例に対しては,疣贅切除により生じた欠損部の自己心膜(未処理)によるパッチ形成,心房中隔壁によるVSD閉鎖,自己心膜によるASD閉鎖を行った.川崎病後のMR,先天性MRの症例には後尖に対するパッチ拡大(1 例はグルタールアルデヒド処理,1 例は未処理),人工腱索造設,Reed法による弁輪縫縮を行った.腱索断裂症例に対しては,人工腱索や交連部縫合での形成が困難であったため,やむなく逆流部位のパッチ閉鎖術(未処理)を行った.【成績】術後 1 カ月~1 年 5 カ月経過し,手術死亡・再手術例はなかった.遠隔期のエコー上,MRはtraceが 1 例,mildが 3 例,moderateが 1 例であった.経過中,MRの増悪を認めたのは感染性心内膜炎の 1 例のみで,その他の症例は経過良好であった.【結論】自己心膜を用いた僧帽弁形成術の早期・中期成績は良好であった.自己心膜は人工弁などの人工物の使用を回避したい場合の手術材料として有用と考えられた.術後早期の時点では,自己心膜のグルタールアルデヒド処理の有無による差は認められなかったが,今後も経過観察が必要であると考えられた.

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