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びまん性肺動静脈瘻に対する内科治療の試み
旭川赤十字病院小児科1),北海道立小児総合保健センター循環器科2),NTT東日本札幌病院小児科3),札幌医科大学小児科4)
阿部なお美1),富田 英2),畠山欣也2),布施茂登3),高室基樹4),堀田智仙4)

【背景】びまん性肺動静脈瘻(dPAVF)に対する内科治療の報告は少ない.【目的】内科治療を試みたdPAVFの 2 例の経過について検討すること.【症例 1】日齢18,チアノーゼにて紹介入院.初診時SpO2 52%.僧帽弁閉鎖,単心室,大血管転位,肺動脈狭窄と診断し,日齢19,左modified BTを施行,SpO2 80~90%となった.退院後間もなくよりBTが良好に開存するにもかかわらずSpO2が徐々に低下.4 カ月時に右dPAVFと診断,在宅酸素療法を開始しSpO2 70%前後で経過した.酸素投与下でもSpO2 60%台が多くなり,11カ月時にNO吸入療法を施行した.40%酸素吸入下にNO 2~9ppmを 1 日0.5~2 時間吸入し,26日間にわたり吸入前後のSpO2変化を記録した.吸入前および吸入中最大上昇時のSpO2はそれぞれ61.6 ± 6.0%,71.0 ± 4.9%であり有意差を持って上昇したが,NOを吸入しない時間帯のSpO2は変化しなかった.Htは 5%低下した.1 歳時の再検査で左にもdPAVFが出現した.AVFの多い右下葉肺動脈にコイル塞栓術を施行したがSpO2の改善はなかった.心肺移植を目指して渡航したが門脈欠損のため移植適応とならず,1 歳 5 カ月死亡した.【症例 2】1 歳頃よりチアノーゼを認めていた.4 歳時,急性気管支炎で他院を受診した際にdPAVFと診断された.6 歳時,転居に伴い当科紹介.SpO2 70%台,Ht 65%以上が持続し在宅酸素療法開始,SpO2 70~84%で経過した.9 歳頃よりSpO2 58~73%となり,10歳11カ月よりニフェジピン内服を開始.1mg/kgまで漸増したところSpO2は69~75%となったが,11歳 4 カ月死亡した.【結語】dPAVFの 2 例に対しNO吸入,ニフェジピン内服を試みた.いずれも効果は一過性または極めて限定的であり長期予後の改善効果はなかった.

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