II-P-33
EpoprostenolでPVOが顕在化したisolated pulmonary venous obstructionの 1 例
島根大学医学部小児科
若林景子,安田謙二,林 丈二

【はじめに】肺静脈狭窄/閉塞(PVO)は,総肺静脈還流異常の術後などでみられることがある.しかし,心内構造に異常のないものはまれで,肺動脈性肺高血圧症(PAH)との鑑別に難渋する.われわれは心雑音,体重増加不良を契機に心内構造異常を伴わない肺高血圧からPAHが疑われ,治療経過中にPVOが顕在化した症例を経験したので報告する.【症例】6 カ月男児.心雑音と 4 カ月以降の体重増加不良を主訴に当科を受診した.エコーで体血圧を凌駕する著明な右室圧の上昇がみられたが,心内構造に異常を認めなかった.酸素投与で,エコー上右室圧はやや低下,左室容量も拡大したが,両側肺静脈血流の加速(V = 2.2m/s)がみられるようになった.酸素に対する反応がよいこと,呼吸困難症状がないこと,胸部X線写真で肺うっ血を認めないことから,肺高血圧の主因はPVOよりもPAHと考え,酸素投与,dobutamine,milrinone静注,beraprost内服を開始したところ,BNPも入院時1,602.3pg/mlから入院 6 日目121.5と改善した.心カテ所見では,酸素投与下で主肺動脈圧70/32/(49),両側肺動脈楔入圧18,肺血管抵抗8.86Um2であった.入院14日目肺高血圧クリーゼ様の症状があり,epoprostenolを0.5ng/kg/minで開始したところ,開始後 2 時間頃より呼吸困難症状が出現し,胸部単純X線で肺うっ血の増悪,エコーで右肺静脈血流のさらなる加速(V = 2.7m/s)がみられ,PVOの顕在化と考えepoprostenolを中止した.胸部造影MDCTを施行したところ,両側肺静脈に局所性狭窄がみられたため,入院17日目に手術のため転院した.【まとめ】心内構造異常を伴わないPVO症例を経験した.明らかな肺うっ血や呼吸困難症状はなかったが,epoprostenolの投与によりPVOが顕在化した.胸部造影MDCTはPVOの形態を評価するうえで有用であった.

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