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生後10時間で経皮的肺動脈形成術(PTPV)を施行した重症肺動脈狭窄の 1 例
兵庫県立こども病院循環器科
齋木宏文,加藤竜一,藤田秀樹,佃 和弥,城戸佐知子,鄭 輝男

【背景】生理的肺高血圧の寛解がPTPV施行時期の目安となっている.生後10時間でPTPVを施行し新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)のため管理に難渋した症例を経験したので報告する.【症例】38週,3,035g,正常経膣分娩で出生.仮死なし.日齢 0,酸素投与下でSpO2 80%台,心雑音を認め初診.頻拍と多呼吸を認め,肝腫大および全身性浮腫,末梢冷感は著明であった.胸部X線写真では心胸比73%,超音波検査でcritical PSと診断しPGE1CDを開始した.卵円孔はflap状で心房収縮期にわずかに右左短絡血流を認めた.左室拡張末期径は13.5mm × 15mmと小さく,肺動脈弁輪径は5.5mm(65%N),三尖弁輪径は13mm(118%N)であった.現状の心房間交通のみでは十分な左室容量は確保し得ないと判断し,PTPV(適応がなければ心房中隔裂開術)を施行する方針とした.8mmバルーンで弁形成を行い,waistは消失,弁の開放径は 1mm弱から 5mm程度となった.術後は高濃度酸素を投与したが日齢 1(生後22時間),新生児遷延性肺高血圧を発症し呼吸管理,鎮静,NO吸入,アルカローシス,PGI2療法を要した.PPHNとPS,restrictive PFOのため肺血流は不十分で,循環作動薬とPGE1CDは継続した.しかし動脈管血流が直接右室へ流入する血行動態で,著明なうっ血と利尿低下は遷延した.血管内容量と腎血流を維持するようvolume overloadで管理し,徐々に肺循環は改善した.日齢 7,PGE1CD中止.日齢16,抜管.呼吸状態が不安定で利尿低下,肝腫大など認めたものの徐々に循環作動薬を減量し,生後 1 カ月で一般病棟転棟,無投薬で退院した.【結論】PTPVは可能であればPHの寛解まで待機すべきである.心房間交通がrestrictiveで待機が不能な症例ではPTPVもしくはBASを考慮する必要があるが,待機不能の決断,PTPVまたはBASの選択は困難である.

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