II-P-35
Cutting balloonによる狭窄解除術が奏効した蛋白漏出性胃腸症・術後下大静脈―右房接合部狭窄の 1 例―
九州大学病院小児科1),九州大学病院心臓血管外科2),佐賀大学医学部小児科3)
山脇かおり1),金谷能明1),池田和幸1),古野憲司1),山口賢一郎1),益田宗孝2),富永隆治2),西村真二3),大野拓郎1)

【はじめに】蛋白漏出性胃腸症(PLE)は右心バイパス術後などにみられる重大な合併症である.今回,右部分肺静脈還流異常(PAPVC)修復後,右肺静脈・上大静脈狭窄(RPVO,SVCO)解除および右肺切除術後遠隔期の下大静脈-右房(IVC-RA)接合部狭窄によるPLEに対し,cutting balloon(CB)を先行させた拡張術を実施した症例を経験した.【症例】10歳女児.心室中隔欠損(VSD)・PAPVCの診断で 1 歳時にVSDパッチ閉鎖術を施行.術後右心負荷が残存し,4 歳時にPAPVC修復術を受けたが,RPVO,SVCOを生じGlenn吻合および右肺切除を余儀なくされた.術後の心臓カテーテル検査では,IVC-RA接合部に 6mmHgの圧較差がみられた.9 歳 9 カ月時より浮腫・肝脾腫・腹満と低蛋白血症が出現,腸管からのアルブミン漏出を確認しPLEと診断した.プレドニゾロン内服に反応せず,ヘパリン5,000単位/m2持続点滴で改善したが,薬剤中止により再燃した.3D-CTで右房内PTFEパッチと周囲に増生した組織による狭窄が認められ,同部位に対しPeripheral CB(Boston Scientific社,外径 7mm)を先行させ,Static Dilation Balloon(XXL,Boston Scientific社,外径12mm,2 本)を用いて狭窄拡張術を施行.IVC-RA接合部の圧較差は10→3mmHgまで低下した.【結語】PAPVC修復後RPVO,SVCOでGlenn吻合・右肺切除術を行いPLEを合併した症例を経験した.原因であるIVC-RA接合部狭窄に対しCBを先行した拡張術を行い,有効な後拡張が得られた.今後の症例の蓄積が必要であるが,術後狭窄に対するCBの使用は有用であると考えられる.

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