II-P-37
大血管転換術後の肺動脈分岐部狭窄に対するバルーン拡大術により大動脈肺動脈窓を形成した 1 乳児例
東京慈恵会医科大学小児科
寺野和宏,高木 健,河内貞貴,安藤達也,藤原優子,衞藤義勝

【はじめに】大血管転換Jatene術後の肺動脈狭窄はおよそ20%程度で発生するといわれており,術後肺動脈狭窄に対するカテーテル治療に関して現在までに数々の有用性が報告されてきた.今回われわれはJatene術後のカテーテルによる狭窄解除後に大動脈肺動脈窓を合併した症例を経験したので報告する.【症例】3 カ月の乳児.日齢 6 に大血管転換に対してJatene手術を施行した.術後に圧較差70mmHgの肺動脈分岐部狭窄があり,生後 3 カ月にカテーテルによる狭窄解除を施行した.【経過】カテーテル治療は左肺動脈狭窄径 3mmに対してWanda 10mm(狭窄径に対して333%)を 8atmで拡張.右肺動脈狭窄径2.8mmに対してWanda 10mm(狭窄径に対して357%)を 8atmで拡張した.左肺動脈主肺動脈間の圧較差は56~19mmHgとなり,右肺動脈主肺動脈間の圧較差は71~16mmHgとなった.カテーテル治療後は特に問題なく経過しており治療後の心エコー検査でも有意な短絡血流は認められなかった.退院 3 日後に突然の嘔吐が出現し,顔面蒼白,循環不全となった.心エコー検査で有意短絡を有する大動脈肺動脈窓がありカテーテル治療の合併症と考えた.内科的管理による循環不全の改善を待ち外科的な修復術を施行した.【考察】大血管転換術後肺動脈狭窄に対するバルーン拡大術の合併症としての大動脈肺動脈窓は比較的まれな合併症であり,その発生年齢は年長児に比較的多く術後早期の発生は報告が少ない.患児は治療直後に有意短絡は出現しておらずカテーテル治療により心エコー検査で同定不可能な小さな亀裂が入り時間の経過でその亀裂が拡大して今回のような経過をとったと考えられる.狭窄径に対して300%以上の拡大径を持つバルーンを使用したが,径の大きなバルーンを使用して治療を行う場合は本合併症に注意が必要であり,術直後に問題がなくても数日の経過で動脈壁の損傷による大動脈肺動脈窓を来す可能性があり,注意深い経過観察が必要である.

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