II-P-38
Ross手術後の左冠動脈前下行枝閉塞に対しPTCAを試みた 1 例
新潟市民病院小児科・新生児医療センター1),新潟市民病院心臓血管外科2)
佐藤誠一1),星名 哲1),沼野藤人1),金沢 宏2)

【はじめに】Ross手術後に 1 年間を無症状で経過した症例で,左冠動脈前下行枝(LAD)の完全閉塞に対し,経皮的冠動脈形成術(PTCA)を試みたので報告する.【症例】16歳男性.大動脈弁狭窄,大動脈弁逆流に対し,15歳 2 カ月時にRoss手術が施行された.術後経過は順調で,特に症状なく学校生活を送っていた.心エコーでも明らかな壁運動低下は認められていなかった.16歳 3 カ月時に術後の心臓カテーテル検査が施行され,LADの完全閉塞が確認された.【経過】右冠動脈造影でLAD領域へ豊富な側副血行を認めた.ペルサンチン負荷心筋シンチでは,明らかな灌流欠損は認めなかった.心拍同期による 3D-CTでは,閉塞したLADの近位側と遠位側で連続性が推定できた.血栓性閉塞の可能性も考えられ,16歳 7 カ月時にPTCAによる再疎通を目的に心カテを施行した.【PTCAの実際】LAD #6 に100%の閉塞病変を確認した.分岐部の同定が難しく,血管内エコー(IVUS)を左冠動脈回旋枝(LCX)へ留置して,LADの分岐部の選択を試みた.しかしLADへのワイヤー通過は困難であった.一方,LAD #6 閉塞部の中枢側に,25~50%狭窄を認めた.IVUSで一部解離を認め,バルーン3.5mm × 12ATMでtake upして終了した.【考察】LAD閉塞の原因としては,血栓性閉塞となんらかの機械的閉塞が考えられた.今後の治療方針としては,(1)側副血行が十分に発達し虚血所見がないのでこのまま経過観察する,(2)PTCAを再施行する,(3)バイパス手術を考慮する,など検討中である.

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