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カテーテルインターベンションの合併症―頸静脈アプローチによる右肺動脈ステント留置術後の発作性上室性頻拍―
北里大学医学部小児科1),北海道立小児総合保健センター循環器科2),相模原協同病院3)
横関祐一郎1),中畑弥生1),富田 英2),藤野宣之3),大和田夏子1),木村純人1),石井正浩1)

【症例】1 歳 9 カ月男児,体重6.4kg.1,252gで出生.左多嚢胞腎,尿道下裂,VSD,ASD,PDA,PHと診断.心不全が進行し日齢 7 に動脈管結紮術と肺動脈絞扼術を施行した.生後 7 カ月時に心内修復術,肺動脈形成術を行ったが右肺動脈分岐部狭窄が残存した.右肺動脈形成術およびバルーン肺動脈拡大術を行ったが狭窄は解除されず右肺動脈-主肺動脈間に40mmHgの圧較差と左肺高血圧を生じた.肺血流シンチにてrt:lt = 2:8 となり肺高血圧の進行が懸念され,肺血流比不均衡の是正を目的にステント留置術を行った.【手技】静脈麻酔,筋弛緩剤投与下に気管内挿管を行った.両側大腿静脈閉塞のため右頸静脈からガイドワイヤーを右肺動脈の末梢に留置し,6F 45cm Arrow Flexシースを上大静脈-右房接合部まで進め,ここでステントをマウントしたバルーンをシースの先端まで進めた.シースとバルーンの位置関係を保持しながら一体として狭窄部に進め拡大留置を行った.【経過】ステントの留置終了後シースを抜去したところ120bpmであった心拍数が70bpmのjunctional rhythmとなった.硫酸アトロピンの投与を行った直後から発作性上室性頻拍230bpmとなった.ATP(adenosine triphosphate disodium)投与,cardioversionの効果は一時的であったため,ステロイドおよびワソランの静注を行ったところsinus rhythmが回復した.【考察】頸静脈からのロングシース挿入によるsinus nodeへの機械的刺激によってsinus nodeの機能低下が生じていたことに加えて,硫酸アトロピン投与により交感神経過緊張状態を誘発したことがPATの原因と推察された.このような機械的刺激が誘因と考えられるインターベンション後の不整脈に対して,ステロイド投与は治療の一つの選択肢であると考えられた.

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