II-P-42
拡大した主肺動脈内の肺動脈弁上狭窄に対するパラレルステント留置―ステント滑脱とバルーン破裂からの修復―
市立室蘭総合病院小児科1),北海道立小児総合保健センター循環器科2),札幌医科大学小児科3)
近藤謙次1),富田 英2),畠山欣也2),横澤正人2),高室基樹3)

【背景】留置時のステント移動とバルーン破裂はステント留置時の主要な合併症である.【目的】拡大した主肺動脈内の肺動脈弁上狭窄に対するパラレルステント留置時に経験したステント滑脱とバルーン破裂,およびこれに対する修復について報告すること.【症例】16歳の女性.3 歳時にファロー四徴の心内修復術を受けたが,肺動脈弁上狭窄が残存.2 回のバルーン拡大術を行ったが無効でステント留置の適応と判断した.カテーテルでの引き抜き圧較差は40mmHgで右室/大動脈収縮期圧比は0.60であった.肺動脈弁輪径は26mmで狭窄部は限局で最小径10mmであった.P3008をZ-med II 12mm/3cmにマウントし,主肺動脈に 2 本平行に留置した.15mm/3cmのZ-med IIによる後拡大時にステントが遠位に脱落.右のステントが左のステントの近位に重なる形となり左へのアプローチが困難となった.ステントをガイドワイヤー,バルーンで固定し,左右肺動脈遠位に移動させた後,Z-med II 15mm/3cmにP3008をマウントし左右のステント近位に挿入したが,拡大途中に右のバルーンが破裂し,また左はステントがバルーンの遠位に移動し,いずれも不完全拡大となった.破裂した右のバルーン回収時右のステントは不整に変形した.右ステント内へはアプローチ不能のため,変形したステントの横から右肺動脈にロングシースを通過.不完全拡大の左ステント内にもロングシースを通過し,右には変形ステントを肺動脈壁に押し付ける形でP3008を挿入.不完全拡大の左ステントと同時に拡大留置し,左右肺動脈と肺動脈弁上部の引き抜き圧較差は10mmHgとなった.1 年後のカテーテルで引き抜き圧較差は 5mmHg,右室/大動脈収縮期圧比は0.35であった.【考察と結語】拡大した主肺動脈内の限局性弁上狭窄ではP3008のパラレル留置であっても,ステント移動の可能性が高く,extra-largeステントなどの使用が望ましいと考えられる.

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